2023 Fiscal Year Research-status Report
唾液中薬物濃度を新たな指標とする非侵襲的抗MRSA薬TDMの創出
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22K08597
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
山本 善裕 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (70452844)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 泰弘 日本大学, 薬学部, 教授 (20644339)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 唾液中薬物濃度 / 抗MRSA薬 / 抗菌薬適正使用 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗菌薬の治療薬物モニタリング (TDM) では血液中薬物濃度を指標とするが、痛みを伴う侵襲(採血)を避けることはできない。さらにTDMの正確性を向上させるため、頻回な薬物濃度測定による採血数の増加が懸念される中、非侵襲的なTDMの試みは行われていない。そこで、申請者らは唾液中薬物濃度に着目した。唾液中薬物濃度を用いることで、患者の負担だけでなく医療従事者の労力軽減にもつながる。 抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA)薬の適正使用のために、バンコマイシン、テイコプラニン、アルベカシンの血液中薬物濃度を指標としたTDMが日常的に実施されている。また、近年上市されたダプトマイシン、リネゾリド (LZD) およびテジゾリド (TZD) も治療効果と血液中薬物濃度に深い関係性が報告されている。特に治療効果の指標であるPK/PDインデックスが血液中濃度曲線下面積 (AUC)/最小発育阻止濃度 (MIC) の場合、数回程度の血液検査では精度良く予測することは非常に難しいという問題点がある。本研究の目的は、抗菌薬の唾液中薬物濃度を新たな指標とする非侵襲的TDMの創出手法を開発することである。本研究課題は、感染症における個別化投与設計の質の向上に貢献すると同時に、抗菌薬の個別化投与の研究領域開拓に繋がると期待できる。これまでに、健康成人6名を対象とした抗MRSA薬であるリネゾリド(LZD)の唾液中・血液中濃度の測定を行った。LZDを単回静注投与し、0,0.25, 0.5, 0.75, 1, 1.5, 2, 2.5, 3, 3.5, 4時間における経時的な唾液中および血液中薬物濃度を高速液体クロマトグラフィー(蛍光検出)にて測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血液・唾液間の抗MRSA薬移行モデルを構築するため、唾液中・血液中LZD濃度をノンコンパートメント解析を行った。AUCの算出は線形もしくは非線形台形法にて算出し、そこからCmax、最高血中濃度到達時間、消失半減期などのPKパラメータを算出し、コンパートメントモデル解析により血液・唾液間の抗MRSA薬移行モデルの構築を行ってきた。また、唾液中薬物濃度によるPK/PDインデックスの評価のため、PDパラメータには三学会合同抗菌薬感受性サーベイランスのMIC分布を用い、10,000回のモンテカルロシミュレーションを実施する。次に算出した唾液中PKパラメータをランダムに組み合わせ、最も有効性の確率が高いPK/PDインデックスの検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
感染症患者の唾液中薬物濃度を指標とするプロスペクティブな展開及びモデルの再評価として、感染症患者の唾液中薬物濃度の測定、生理学・生化学的データ、治療期間、バイオマーカー、抗菌薬の効果および副作用の評価に関連する項目を同時収集する。これらで得られた唾液中抗菌薬濃度を指標としたTDMによりPK/PDインデックスの臨床評価を行う予定である。このとき、唾液中薬物濃度から血液・唾液間の抗MRSA薬移行モデルを用いて血液中薬物濃度を逆算し、相関性と有用性の検証を行う予定である。
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Research Products
(3 results)