2023 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋由来細胞外小胞による糖尿病機序解明、治療への応用
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22K08666
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
齋藤 従道 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (80572619)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 細胞外小胞 / 糖取り込み / 骨格筋 / 伸展刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで我々は培養骨格筋細胞に伸展刺激を加え、分泌される細胞外小胞(EVs: Extracellular Vesicles)が骨格筋や脂肪細胞において糖取り込促進作用があることを見いだしている。また、伸展刺激により分泌されるEVs(Stretch EVs)、基底状態において分泌されるEVs(Basal EVs)をラベリングし、両方のEVsが直接脂肪細胞に取り込まれていることを確認できている。つまり、Stretch EVs内に糖取り込みを促進する分子が存在し、EVsが脂肪細胞に取り込まれることによって、他細胞の糖取り込み機構を制御していることが明らかとなった。 本研究では骨格筋細胞から分泌され、脂肪細胞の糖取り込みを制御する因子の同定、解析を主目的としている。これまでに糖取り込みに関与する可能性のあるAMP-activated protein kinase (AMPK) やGlucose transporter 4 (Glut4)の発現において、EVsを受け取る脂肪細胞や骨格筋細胞内で発現量が変化することを報告してきた。さらに、培養骨格筋細胞から分泌されたStretch EVsをマウスに投与したところ、マウス骨格筋でのGlut4の発現量が上昇することが確認できた。この予備実験から伸展刺激を加えた骨格筋培養細胞で得られたEVsがin vivoで作用することを初めて証明できた。 そして最終的には糖取り込みを制御する分子の発現を変化させたEVsを人工的に作成し、多量に精製し、生体内に投与することにより糖代謝を改善する方法(糖尿病を改善する治療法)を模索している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2023年度中に異動したため、新天地でのセットアップに時間を要しており、実験の進捗が遅れている。 Stretch EVs内に存在するタンパクを質量分析装置で網羅的に解析し、骨格筋培養細胞の細胞膜に発現する糖トランスポーターの発現量が、コントロール(Basal EVs)と比較し、増えていることが判明した。また、細胞外小胞を精製し、当該タンパク質量の変化をウェスタンブロット法にて複数回の実験にて確認し、Basal EVsと比較し、Stretch EVsで優位に増加していることが明らかとなった。当該分子は遺伝子、タンパク質として同定されているが、その機能は全くの未知であった。しかし、その立体構造が予想され、結合する分子がある程度予想できる。そこで、当該分子と結合する可能性のある分子の中で、細胞骨格が変化する状況で骨格や動きを認識するタンパク質に着目し、当該タンパクとの結合状態を、免疫沈降法を用いて観察した。すると、コントロール状況では2つの分子は結合していたが、伸展刺激を加えるとその結合が乖離することを見出した。このことは、基底状態においてEVsを細胞内に留まらせ、伸展刺激により細胞外に分泌されるメカニズムの一端と考えられた。つまり、当該分子は、伸展刺激により他タンパクとのタンパク結合状態を変化させ、EVsの分泌を調節する可能性が示唆された。 以前から続けていた、骨格筋培養細胞内での当該分子のノックダウンを試みていたが、完全なタンパク発現抑制はできず、約50%程度であった。この細胞を用いて、伸展刺激を加える条件設定を行い、EVsを精製する条件を確立した。そして、EVsでの当該分子の発現量をウェスタンブロットにて解析したところ、EVs内での発現量を有意に抑制できることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
骨格筋培養細胞内で目的のタンパク発現制御し、伸展刺激を加えてからのEVsの精製条件の設定が終了した。今後、培養細胞から分泌されるEVsを大量に精製する次段階に進む予定である。また、発現制御されたEVsが培養細胞への糖取り込み機構にどのように関与するかを、糖取り込み実験にて観察する予定である。さらに、EVsが進展刺激における分泌制御機構もタンパク分子間の結合、乖離が影響している可能性が示唆されたため、メカニズムの解明も同時進行していくことを想定している。
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Causes of Carryover |
2023年度に異動し、研究の一時中断があり、研究が遅れたため次年度使用額が生じた。 2024年度は、2023年度に中断していた研究計画の続きから再開し、当初計画していた研究を完遂していく予定である。
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Research Products
(2 results)