2023 Fiscal Year Research-status Report
共有結合DNAアプタマーと増殖型レトロウイルスを応用した膵癌免疫療法の開発
Project/Area Number |
22K08837
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平野 聡 北海道大学, 医学研究院, 教授 (50322813)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
YANG JAY 北海道大学, 医学研究院, 客員教授 (60897619)
七戸 俊明 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (70374353)
中村 透 北海道大学, 医学研究院, 助教 (70645796)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 膵癌 / ICI / DNAアプタマー |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌は腫瘍免疫活性が低く、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の効果が乏しい現状であるが、共有結合DNAアプタマーを応用したICI(Immune checkpoint inhibit covalently-binding aptamers:ICIA)を開発し効果を検証する目的で研究を開始した。DNAアプタマーは生体内のDNAseで分解され不安定という欠点がある。そこで共有結合を付加し安定したDNAアプタマーの作成実験を施行した。PD-L1に対する共有結合アプタマーを複数作成した。PD-L1に対するアプタマーの塩基配列は多数報告があるが、aptPD-L1(Molecular Therapy-Nucleic Acids20165,e397)を選択し、16番目、20番目、45番目のT残基にwarheadを導入した共有結合型アプタマーを作成した。SDS-PAGEで観察すると、コントロールとして使用したthrombin共有結合型アプタマーは結合が確認されたが、PD-L1とcovalent aptamer(T16,T20,T45,3riplet)の4種類はいずれも結合を確認できなかった。Native-PAGやSELEX bufferを用い、またbufferの種類や条件設定を複数施行したが、いずれも結合を確認できなかった。特に生成の過程で使用する銅が細胞障害を起こす事がその原因の一つとも考えられた。そこで、癌細胞の増殖因子VEGF165に対する共有結合アプタマーを作成し実験系がワークするかを検証した。結果、VEGF165共有結合アプタマー(T4,T17,T22)は3種ともVEGFとの結合が確認された。また大腸癌細胞株HT29やヒト血管内皮細胞に対するVEGF165共有結合アプタマーの細胞増殖阻害実験、インベージョンアッセイを施行した。結果、コントロールアプタマー(スクランブル配列)と比較し、有意に浸潤能と遊走能を抑制した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
PD-L1に対する共有結合アプタマーは、DNAアプタマーの配列のうち、T残基にAr-SO2Fを結合して作成するが、複数のT残基からどの部位を選択するかの指標はない。今回作成したPD-L1に対するアプタマーは、抗原抗体反応と同様にDNAの三次元構造によっては、Ar-SO2F結合部位が、抗原との結合そのものを阻害する位置となっていた可能性がある。条件設定を可能な限りのバリエーションで施行を重ねたが解決には至らなかった。そこで、VEGF165共有結合アプタマーを用い、共有結合の位置を検討し、血管新生抑制の方向にも研究を展開した
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Strategy for Future Research Activity |
共有結合を組み込んだSELEX法によるPD-L1とDNAアプタマーの結合配列の探索の準備を行なっている。多数の候補を同定し新規配列の同定となるため、本研究期間の延長が必要となる。また、共有結合のメリットを追求せず、既報のアプタマーを用い、①腫瘍選択的増殖型レトロウイルスベクターによる腫瘍免疫誘導を併用し、アプタマーとの相乗効果を検証する。②IL-15アゴニストによるナチュラルキラー細胞(NK細胞)ならびに細胞傷害性T細胞(CTL)の誘導を加え、複合療法の実験を進める予定である。一方、VEGF165共有結合アプタマー研究は一定の結果が出てきたため、治療薬に向けた研究を推進する。
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