2023 Fiscal Year Research-status Report
腹部大動脈瘤の炎症増幅をつかさどるシグナルクロストークの解明と治療法の開発
Project/Area Number |
22K08963
|
Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
中村 隆 東京医科大学, 医学部, 助教 (30772371)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 炎症 / EP4 / toll-like受容体 / IL-6 / 腹部大動脈瘤 / 血管平滑筋細胞 / TAK-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に、EP4過大発現血管平滑筋細胞にEP4アゴニスト (AE1-329)とTLR2アゴニスト (Pam3CSK4)、または、TLR3アゴニスト (poly IC)、TLR4アゴニスト (LPS)を同時に投与することで、腹部大動脈瘤の増悪に関与する炎症性サイトカインであるIL-6のmRNA発現量が、単剤投与に比較して顕著に上昇することを明らかにした。そこで、その他の炎症性サイトカインに対する2剤同時投与の影響を評価するため111種類のサイトカインの検出が可能となるサイトカインアレイキットを用いて検討を行なった。その結果、111種類のサイトカインの中で2剤同時投与により相乗的な増幅が認められるのはIL-6のみであることが明らかとなった。また、マウス血管平滑筋細胞株 (MOVAS)においても、EP4アゴニストおよびTLR2アゴニストの2剤同時投与を行ったところ、単剤投与に比較してIL-6 mRNAが相乗的に増幅されることを明らかにした。さらに、IL-6 mRNAの相乗的増幅に関与するプロスタグランジンE2-EP4シグナルおよびTLRシグナルの下流シグナルとしてtransforming growth factor beta activated kinase 1 (TAK1)に着目した。EP4課題発現血管平滑筋細胞およびMOVASにTAK1阻害剤 (5z-7-Oxozeaenol)を投与したのち、EP4アゴニストおよびTLR2アゴニストを投与したところ、IL-6 mRNAの発現量が顕著に抑制されることが明らかとなった。以上のことから、炎症性サイトカインの中でも血管平滑筋細胞におけるEP4シグナルとTLRシグナルによる相乗的増幅はIL-6特異的であるとともに、その反応にはTAK-1が関与している可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、EP4およびTLRシグナルにて相乗的に増幅される炎症性サイトカインの網羅的探索を行い、IL-6のみを同定することができた。また、炎症増幅に関与するEP4シグナルおよびTLRシグナルの下流分子の探索を行い、TAK-1を同定した。さらに、それ以外の下流シグナルに関与する分子に関しても阻害薬を用いた検討を開始している。また、ex vivoによるヒト培養細胞を用いた3次元血管モデルの開発の検討を進めている。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、IL-6 mRNAの相乗的増幅に関与するEP4およびTLRシグナルの下流シグナルのさらなる同定を阻害薬を用いて進めていくとともに、MOVASを用いた遺伝子ノックダウン技術による同定も行っていく。また、TAK-1を介する炎症増幅機構をTAK-1のリン酸化部位に着目して解析する。さらに、3次元血管モデルや腹部大動脈瘤の動物モデルを用いてEP4およびTLRシグナルによる炎症増幅機構の病態的意義を確認する。
|
Causes of Carryover |
メンブレンアレイによりEP4シグナルおよびTLRシグナルの活性化により増幅する分子がIL-6のみであり、その他の分子のELISAキットを購入する必要がなくなり、次年度使用額が生じた。来年度はTAK-1のリン酸化抗体やphos-tag WB用の試薬の購入、動物実験等に助成金を使用する。
|
Research Products
(4 results)