2023 Fiscal Year Research-status Report
「痺れ」を伝達する末梢―脊髄ネットワーク機構の解明と治療薬の探索
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22K09020
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
歌 大介 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 准教授 (70598416)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木口 倫一 和歌山県立医科大学, 薬学部, 准教授 (90433341)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 痺れ / 痛み / シナプス伝達 / 電気生理学 / in vivo記録 / 虚血再灌流 / ニューロン |
Outline of Annual Research Achievements |
「痺れ」は長時間の正座などだけではなく、糖尿病、末梢絞扼性ニューロパチー、多発性神経炎、末梢動脈疾患、抗がん薬による副作用など様々な疾患や治療にも頻繁に付随するが有効な治療法・治療薬が乏しいことから患者の日常生活やQOLを著しく低下させる。特に、糖尿病患者の30-40%、また抗がん薬では投与されたほぼ全ての人に「痺れ」が見られがん化学療法の大きな妨げとなっている。糖尿病・がんは極めて患者数が多く、糖尿病をはじめとする疾患やがん治療に伴う「痺れ」は全世界的に早急に取り組むべき最重要課題である。糖尿病や抗がん薬による「痺れ」では共に末梢血流の低下が見られる。そこで申請者所属研究室では、末梢血流の低下により「痺れ」が生じると考えらえる、正座後の「痺れ」を模した後肢虚血再灌流モデルを世界で初めて確立し末梢神経機構の一端を解明(Sasaki A et al., J Pharmacol Exp Ther., 2014)してきたが、脊髄機構に関する研究は皆無である。本研究では、後肢虚血再灌流モデル動物を用い「痺れ」の脊髄機構の全容解明を目的とした。本年度、「痺れ」の脊髄機構の全容解明を目的とし、後肢虚血再灌流モデル動物の脊髄後角表層ニューロンで見られる変化の詳細な解析を行った。まず、虚血再灌流時に脊髄後角表層ニューロンが異常発火し、その継続時間は虚血再灌流時に見られる行動学的変化(後肢舐め動作)の時間とおおむね一致していることが分かった。また、皮膚受容野に対する機械的刺激に対して非常に特徴的な応答を示すこともわかっており、現在定量的な解析を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「痺れ」の脊髄機構の全容解明を目的とし、後肢虚血再灌流モデル動物を用い世界に先駆け「痺れ」の入力を受ける脊髄後角表層細胞からのin vivo記録には成功し、脊髄後角表層ニューロンで異常な発火パターンを示すことも捉えることが出来ている。また皮膚受容野に対する機械的刺激に対し非常に特徴的な反応を示すことも見出している。このことから、おおむね計画通りに進んでいると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在行っている後肢虚血再灌流モデル動物を用い脊髄後角表層細胞からのin vivo記録をさらに行い、痛みとの違いなどをより詳細に検討していく予定である。現在皮膚受容野に対する機械的刺激に対し非常に特徴的な反応について定量的な解析を進めており、「痺れ」に対する治療薬探索のための標的分子の同定に繋げていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
円安・物価高、物流の停滞で輸入試薬・機器が高騰しているだけでなく納品が大幅に遅れているため翌年度へ繰り越すこととした。
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