2023 Fiscal Year Research-status Report
術後認知機能障害病理における統合的ストレス応答の果たす役割
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22K09038
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
内田 洋介 北海道大学, 大学病院, 准教授 (00507585)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 術後認知機能障害 / 統合的ストレス応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
統合的ストレス応答(integrated stress response:ISR)は、様々な生体ストレスに応じて活性化される翻訳開始因子(eukaryotic initiation factor 2α:eIF2α)のリン酸化からはじまる一連のシグナル伝達で、生体におけるタンパク合成を制御すると考えられている。近年、ISRの亢進が様々な認知機能障害を来す疾患に関与していることが報告されてきているが、手術後の10%を超える患者に発生するとされる認知機能障害との関連は明らかにされていない。一方、低分子化合物であるISRIBは、翻訳開始因子(eIF2B)に結合することで、ISR経路を抑制する作用があり、脳損傷モデルマウスにおいてはISRIBの投与による神経保護効果が報告されている。本研究では、統合的ストレス応答が手術後に発生するマウスの認知機能低下にどのような役割を果たしているか、またISRIB投与により術後認知機能障害を防ぐことができるかについて検討することを目的としている。 1.対象:本研究にはC57Bl/6Jマウス(8-12週齢)し、マウスから単離したモノサイトなどの細胞を使用した。介入操作は当初計画していた脛骨手術に加えて、過去の報告にならい無菌的手術と同等の効果を有するとされるHMGB1の腹腔内投与をもって代替することとした。 2.動物試料の解析:マウスから採取した血漿サンプルおよび海馬サンプルを酵素結合免疫吸着検査(ELISA)法やPCR、Western Blottingなどの分子生物学的検討を行った。 3.行動学的試験:マウスの行動に与える影響を恐怖条件付け試験によって観察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度当初は前年度遅れの影響を受けていたものの、動物サンプルから得られる実験データの採取は順調に積み重ねられつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
脛骨手術やHMGB1投与で対象組織でのISRの亢進が確認されつつある。今後はISRIBを用いてISRが動物モデルでどのように変化するか観察する予定である。
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