2022 Fiscal Year Research-status Report
Exploration and functional analysis of pregnant biomarkers related to mother-child mental health
Project/Area Number |
22K09625
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 智美 埼玉医科大学, 医学部, 非常勤講師 (50373311)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶原 健 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (80286103)
栗崎 知浩 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (90311422)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 妊娠初期 / バイオマーカー / セロトニン / 自閉スペクトラム症 / 母体うつ病 / 抗うつ薬 / 神経発生 / ゼブラフィッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、うつや不安障害で重要な役割を担う神経伝達物質セロトニン(5-HT)とその代謝産物を含むメタボローム解析により、母体うつと関連のある生体代謝産物を同定し、胎児脳発生や胎盤形成における機能を解析することで、母児メンタルヘルスに関わる妊婦バイオマーカーを同定することを目的とする。 抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害剤(selective serotonin reuptake inhibitor, SSRI)は、セロトニントランスポーター(SERT/5-HTT/SLC6A4)を阻害して細胞外セロトニン濃度を上げることで、うつ病や不安障害などの情動障害に治療効果を発揮する。妊娠初期の抗うつ薬服用が、出生児の自閉症発症リスクを高めることや、自閉症患者が高セロトニン血症を呈するとの知見から、セロトニンが胎児脳の発生や発達に影響を及ぼし、自閉症の発症へと至る可能性が考えらる。しかし、妊娠初期のセロトニン濃度が、脳の発生と発達にどの様な変化をもたらすのかはまだ不明な点が多い。本年度は、ゼブラフィッシュ胚をヒト胎児モデルとし、セロトニンの脳発生・発達における作用解析を行なった。発生初期の一時的なセロトニン処理により、神経細胞の産生が阻害され、神経幹・前駆細胞マーカーが増加し、幼魚の社会的行動が障害される傾向が示されたことから、ゼブラフィッシュにおいても、発生初期のセロトニン濃度が脳の神経発生や社会的行動の発達に重要な役割を果たすことが明らかになった。そこで、妊娠過程でセロトニン経路の母体血中濃度がどのように変化するのかを明らかにするために、正常妊婦の血液検体(合併症なし、投薬なし、病歴・喫煙歴なし)を取り寄せ、セロトニンと代謝産物のHPLC分析による解析を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、埼玉医科大学倫理審査委員会に「母児メンタルヘルスに関わる妊婦バイオマーカーの探索」の課題名で研究計画書を提出し、承認された(承認番号:大2022-010)。また、東北メディカル・メガバンク機構に利用者登録後、事前申請を行い、「母児メンタルヘルスに関わる妊婦バイオマーカーの探索と機能解析」の研究課題名で研究計画書を申請し、採択された(課題番号:2020-0041)。MTAが締結され研究計画書概要が公示されたため、今後試料・情報が分譲される予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
東北メディカル・メガバンク機構から分譲された妊婦試料・情報を用いて、セロトニン代謝経路に関する個別解析を行う。まずは正常妊婦検体を用いて、母体血清マーカーであるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)やエストリオール(E3)を妊娠週数の指標とし、セロトニン(5-HT)や代謝産物(5-HIAA)の定量解析を行い、妊婦の年齢や妊娠週数によるばらつきや変化を明らかにする。また、これらの代謝物質が胎児脳の発生にどのような影響を及ぼすのかを明らかにするために、ゼブラフィッシュ胚をヒト胎児モデルとし、神経発生や回路形成・発達過程における精緻化や、幼魚の社会行動に対する作用解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、埼玉医科大学倫理審査委員会や東北メディカル・メガバンク機構への研究計画書の申請、承認までの手続きに時間を要し、検体試料の入手まで至らなかった。今後は、今年度入手した市販の検体試料を用いた解析も並行して行い、受託解析サービスなども積極的に活用しながら、効率的に研究を進めていく予定である。
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