2022 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞由来気道上皮細胞移植における生着効率向上因子の探索
Project/Area Number |
22K09666
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
桑田 文彦 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (20774459)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 弘恵 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (50397634)
岸本 曜 京都大学, 医学研究科, 准教授 (80700517)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 気管 / ヒトiPS細胞 / 線毛上皮細胞 / トランスクリプトーム / 免疫不全ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
気管は呼気の通り道として重要であり、その管腔面を覆う気道上皮は呼気中の異物を排出する機能を担っているため、障害されると易感染性となり、時として生命にかかわる。申請者らはヒトiPS細胞由来気道上皮細胞移植治療による気管欠損部の早期上皮化を目指し、免疫不全ラットへの移植モデルを確立しているが、生着効率は低く実験ごとのばらつきも大きいため、改善が必要である。 本研究では、我々が既に確立しているhiPSC由来気道上皮移植免疫不全ラットにつき一般的な移植条件を再検討することでI.移植効率の高い移植条件を検討し、その移植条件を用いて作製した移植モデルのII.移植部組織を採取し、遺伝子発現解析により、移植細胞生着に関与するホストとレシピエント双方の遺伝子群の選定をおこない、III.解析結果から想定される移植効率向上因子の調節による生着効率向上法の確立を目指す。 今年度はヒト由来転写産物が検出されるよう、移植細胞の分化ステージの検討やヒトiPS細胞由来気道上皮細胞シートで被覆した人工気管の移植における術式など移植法の改善を行った上で、移植部位からのRNA抽出を複数回行い、解析に必要な量と品質が保たれるような移植部位のサイズ、組織保管法、回収法などの検討を行った。確定した条件で採取された組織からRNA抽出後、RNAの品質評価を行い、トランスクリプトーム解析を行った。またコントロールとして細胞なしの移植部組織、ヒト由来の移植細胞からもRNA抽出を行い、トランスクリプトーム解析に必要な量の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた移植時期、術式の検討を終えられた。移植に用いる免疫不全ラットの系統に関しては他のプロジェクトでの結果が応用できこちらではほぼ行わずに済んだ。移植部位の組織を複数個トランスクリプトーム解析することができ、おおむね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、hiPSC由来気道上皮移植ラット移植部組織の遺伝子発現解析を引き続き行う。移植部位組織を回収してRNAを抽出し、次世代シークエンサーによるトランスクリプトーム解析を行う。シークエンス結果から、含まれるヒト遺伝子、ラット遺伝子につき、以下の検討を行う。検出されるヒト細胞由来遺伝子のリード数が多い個体を生着効率の高い個体と定義し、下記検討を行う。 i)ドナー側の解析:移植細胞での発現変動遺伝子群の選別:ヒト細胞の発現遺伝子に着目し、生着効率が高い/低い個体に特異的な遺伝子群を同定し、移植細胞側で生着に関与する遺伝子群やそこから推測されるカスケードを選定する。 ii) レシピエント側の解析:生着効率が高い/低いラットでの発現変動遺伝子群の選別:ラット細胞の発現遺伝子に着目し、生着効率が高い/低い個体に特異的な遺伝子群を同定し、レシピエントラット側で生着に関与する遺伝子群やそこから推測されるカスケードを選定する。 本項目で選定された遺伝子の発現・機能を調節するグロースファクター及び小分子化合物、もしくは選定されたカスケードをアップ/ダウンレギュレートする小分子化合物等を移植効率向上因子として選定する。 移植効率向上因子が選定されれば、移植効率向上因子の調節による生着効率向上の検証を行う。ヒトiPSC由来気道上皮細胞を移植したラットの移植部切片を用い、同定された遺伝子の発現と生着効率の相関をin situハイブリダイゼーションや免疫染色、qRT-PCR等で確認する。さらに、同定因子の添加による生着効率向上の検証を行う。生着効率向上機能が予測されるものにつき、それらを調節するグロースファクターや小分子化合物を移植時の投与または人工気管やコラーゲンビトリゲルからの徐放等で作用させ、実際に生着効率向上に効果があるか、移植部位のヒト核抗体染色など組織学的評価により検証する。
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