2022 Fiscal Year Research-status Report
Prediction of novel human hearing loss genes by whole genome analysis of mouse hearing loss mutants
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22K09751
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
美野輪 治 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (00181967)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 順遺伝学 / 逆遺伝学 / 難聴遺伝子 / マウスENU変異体 / 非症候群性難聴 |
Outline of Annual Research Achievements |
ENU誘発マウス変異体モデルは、変異導入率が不偏かつ高く、点突然変異誘発により様々な変異アリルを得ることが可能であることから、非症候群性難聴のモデルに適する等、他の変異体作製法にはない利点を有する。申請者の単離した難聴マウス変異体30系統のうち、未知遺伝子の変異による3系統は新規ヒト遺伝性非症候群性難聴のモデルである可能性が高い。本研究課題では、これらENU誘発難聴系統に対象を絞り、全ゲノム配列決定により原因遺伝子変異の同定を遂行し、変異原因遺伝子を迅速に同定する情報学的解析方法や、突然変異体作製とそれらを利用した遺伝子機能解析の技術を広く援用し、新しい難聴遺伝子の発見・機構解明を目指す。難聴研究において有用な実験用マウスゲノム中の遺伝子を網羅的にノックアウトした報告によれば、聴覚機能に関与する遺伝子として新たに50以上が確認され、これを全ゲノム当たりに換算すると500遺伝子に上り、このことは既知ヒト難聴遺伝子の数倍以上の潜在的難聴原因遺伝子が未だ同定されていない可能性を示唆する。そこで新規ヒト難聴遺伝子の効果的探索のために、直接ヒト難聴患者集団の全ゲノム解析の代わりに、マウスENU誘発変異体集団を対象とした順遺伝学的スクリーニングに続く全ゲノム解析を行った。これらの全ゲノム配列決定により、マウスの新規難聴遺伝子を同定し、結果をヒト遺伝性難聴患者集団に適用して迅速なゲノム解析によるスクリーニングを実施する。これによりマウスでの新規難聴遺伝子変異がヒト患者ゲノム中に見いだせるのかを明らかにすると供に、該当マウス変異体の発症機構解析により病原性・障害性の証明を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【ENU難聴変異体のNGSによるゲノム解析】 新規難聴変異体の可能性がある系統の個体化と継代を行い、その中の1系統の表現型解析を実施するとともに、この系統の全ゲノム配列解析による難聴遺伝子の探索を試み、有力な候補を同定した。 【ENU難聴変異体の表現型解析】 上記候補系統のF2世代の個体を用い、ABR(聴性脳幹反応)の測定により、表現型と候補遺伝子変異の共存を確認した。 【ENU変異遺伝子産物の発現解析】 RNA in situ hybridization 法により、該当する新規難聴遺伝子候補の発現解析の結果、内耳コルチ器における微弱な発現を検出した。発現細胞の同定には、より高感度の検出法が必要と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者の単離したENU 誘発変異体マウス、新規難聴遺伝子変異による系統である可能性が高い上記3系統;M1111、M376、M1016について、マウス順遺伝学から始める方向性に従い、解析を進める。①ENU誘発変異体新規難聴系統であるM1111、M376、M1016の3系統について、全ゲノム配列決定を遂行する。組織より単離したゲノムDNA のQCの後、NGSにより配列決定を行う。得られたデータの情報学的解析により、翻訳領域のみならず非翻訳領域における原因変異の可能性を検討する。各系統を継代し、遺伝子型と難聴表現型の連鎖を解析する。連鎖の明瞭な変異を、新たにC57BL6/Jマウスに導入し、KIマウス系統を樹立し、表現型が再現するかを確認する。KIマウスの作成にはCRSPR/CAS9法による。(マウス順遺伝学および逆遺伝学)。②得られた新規難聴系統の内耳における組織学的解析;免疫組織化学、特殊染色、マーカー抗体による蛍光染色、TEM,SEMによる観察、またABR/DPOAE、EP測定による生理学的解析を実施し、内耳障害の記述、機構解析を行う。(マウス順遺伝学) ③上記で解明されたマウス新規難聴遺伝子変異が、ヒト難聴患者の中に見いだせるかの検索を、high throughputな直接配列決定により行う。既知難聴遺伝子(26 個)パネルにてコールされなかった患者に絞りスクリーニングを行う。(ヒト逆遺伝)
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大による世界情勢の影響から、予定していた機器備品や一部試薬の納品が大幅に遅延となったため次年度使用額が生じたが、その他予算の使用については概ね計画通りであった。
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