2022 Fiscal Year Research-status Report
神経伝達物質サブスタンスPによる角膜線維芽細胞のコラーゲン分解調節機構の解明
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22K09847
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
杉岡 孝二 近畿大学, 奈良病院, 准教授 (50399119)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 清孝 近畿大学, 医学部, 教授 (20185432)
日下 俊次 近畿大学, 医学部, 教授 (60260387)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | コラーゲン合成能 / 角膜線維芽細胞 / substance P / TGF-beta |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、神経麻痺性角膜潰瘍の根底にあるメカニズムを理解するために、神経伝達物質の一つであるsubstance P (SP)が、IL-1などの種々の因子で刺激された角膜線維芽細胞によるuPAの発現やコラーゲン分解にどのような影響を与えるかについて、角膜線維芽細胞をコラーゲンゲル内で3次元的に培養するin vitroモデルを用いて検討することである。 令和4年度は、まずはじめにヒト培養角膜線維芽細胞を用い、SP添加による細胞生存率をcell viability assayで検討した。その結果、SPの濃度に依存して、有意に細胞増殖を促進した。次にSP単独、あるいはIL-1, IL-6, TGF-beta, IGF-1の存在下でのSPの有無によるコラーゲン分解能を、fibrin zymographyによるuPAの発現、およびbヒドロキシプロリン測定による定量化試験で検討した。その結果、すべての群においてSPはuPAの発現およびコラーゲン分解能に影響を与えなかった。この結果により、SPがケラトサイトによるコラーゲン分解能に単独で影響を与えないだけでなく、IL-1, IL-6, TGF-beta, IGF-1の存在下においてもコラーゲン分解に影響を与えないことが明らかになった。 そこで、SP単独、あるいはIL-1, IL-6, TGF-beta, IGF-1の存在下でのSPの有無によるコラーゲン合成能を検討した。その結果、SPは単独ではコラーゲン合成に影響を与えなかったが、TGF-betaの存在下でSPはTGF-beta単独に比べ、コラーゲン合成を有意に促進させた。またMMP-1をコラーゲンの分解能の指標に、1型コラーゲンをコラーゲン合成能の指標に設定し、real time PCRにより角膜線維芽細胞のMMP-1および1型コラーゲンの発現を検討したところ、TGF-betaの存在下でSPを加えると、1型コラーゲンのmRNA量は有意に上昇していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、予定していたSPがケラトサイトのコラーゲン分解能に与える影響について、詳細に検討を行ったが、SPがケラトサイトのコラーゲン分解に影響を与えるという結果を得ることはできなかった。しかしながら、SPがTGF-betaによるコラーゲン合成能をさらに促進させるというデータを得ることができた。この結果によりケラトサイトによるコラーゲン代謝にSPが関与しているという知見を得ることができたことは、本研究を継続していく上で大きな前進となったと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果により、SPはTGF-betaの存在下でコラーゲン合成能を有意に促進させることが明らかになった。このTGF-betaによる角膜線維芽細胞のコラーゲン合成能に対するSPの増強作用のメカニズムについては、以下の項目を中心に令和5年度以降さらに検討していく予定である。 1.SPのレセプターであるNeurokinin-1 receptor-1(NK-1R)の発現や細胞内シグナル伝達経路にSPやTGF-betaが与える影響についての検討 2.TGF-betaによるコラーゲン合成に関与する細胞内シグナル伝達経路(Smad signaling)にSPが与える影響についての検討
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Causes of Carryover |
コロナ渦で実験が中断していた時期があり、予定通りに実験が進まなかったため、次年度使用額が生じてしまった。次年度は計画を見直して研究費を使用していく予定である。
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