2023 Fiscal Year Research-status Report
データ駆動型アプローチによる味蕾幹細胞の潜在的多能性の制御機構の解明
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22K09910
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
早津 徳人 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (80543058)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 味蕾 / 味覚受容体 / 幹細胞 / シングルセル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに齧歯類(マウス)、霊長類(ヒト、マーモセット)の舌乳頭・味蕾のシングルセルRNA-seqデータを10x Genomics社のdroplet-basedのscRNA-seq技術を用いて取得してきた。しかし、droplet-basedのscRNA-seqはハイスループット性や簡便な操作性が魅力的だが、一細胞当たりの遺伝子検出数が少ないという性質があったため、個々の味細胞がどのような味覚受容体を発現しているのかなどの詳細な特徴を完全には把握することができていなかった。そこで次に、高感度なplate-basedの完全長scRNA-seq技術Smart-seq3(M Hagemann-Jensen et al.,2020)を用いて、マーモセットの茸状乳頭の味蕾細胞約1000細胞分のシングルセルRNA-seqデータを取得した。その結果、味覚受容体TAS1R1/2/3, TAS2Rsなどを発現する味覚受容細胞間の遺伝子発現プロファイルの違いを高精細に捉えることができた。また合わせて、マウスの茸状乳頭、有郭乳頭の味蕾細胞についても高感度なplate-basedのscRNA-seq技術を用いて、それぞれ1000細胞分以上のシングルセルデータを取得し、齧歯類と霊長類間で味細胞の高精細な比較解析を行った。その結果、生物種間や舌上の部位間では、各身細胞クラスターにおける転写因子群の発現パターンに関しては共通性は見られるものの、味覚受容体の発現パターンは非常に複雑であることが明らかとなった。また更に、先に取得済みのdroplet-basedのscRNA-seqによる大規模の味蕾シングルセルデータを統合し、味蕾細胞が発現するリガンド分子と受容体分子の発現関係に着目した分析を行うことで味蕾前駆細胞や味蕾幹細胞候補群の推定解析を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
シングルセル解析は位置情報を失っていることから、味蕾幹細胞が維持されている位置、その環境の空間的特性を明らかにするために空間トランスクリプトーム解析を行う予定だったが、味蕾細胞を正確に識別するためには高感度・高精細な技術が必要であったため、空間オミクス解析技術の選定に時間を要した。また、味蕾の高精細なシングルセルデータを取得するためにplate-basedのscRNA-seq技術を用いた実験を実施したことでも時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
霊長類と齧歯類の味蕾の高精細なシングルセル解析を行ったことで、想定外の生物種間の違いも見えてきたことから、空間トランスクリプトーム解析においてもマウスとサルの両方の舌乳頭を対象に比較解析する。味蕾細胞が発現するリガンド分子と受容体分子の発現関係に着目した分析を行うことで、理論的仮説に基づく新規味蕾オルガノイド技術の基盤を創出したい。
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Causes of Carryover |
味蕾細胞を正確に識別するためには高感度・高精細な技術が必要であったため、日進月歩の空間オミクス解析技術の選定に慎重になり時間を要したこと、また、味蕾の高精細なシングルセルデータを取得するためにplate-basedのscRNA-seq技術を用いた実験を実施したことでも時間を要したことで、予定していた空間トランスクリプトーム解析が遅れ、次年度使用額が生じた。次年度は霊長類(マウス)と齧歯類(サル)の両方の舌乳頭を対象に空間トランスクリプトーム解析を実施し、データ駆動型アプローチにより導かれるモデルを味蕾オルガノイド技術などを用いて検証する。
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