2023 Fiscal Year Research-status Report
メンブレンベジクルを利用した多機能性ワクチンプラットフォームの開発
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22K09950
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
瀧澤 智美 (橋爪智美) 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (50419785)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泉福 英信 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (20250186)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Staphylococcus aureus / membrane vesicle / 経鼻ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに精製分離した黄色ブドウ球菌が産生するメンブレンベジクル(membrane vesicle; MV)の評価を行ない、粘膜アジュバントであるPoly(I:C)あるいはハイドロキシアパタイトと共にマウスに経鼻免疫し、MV特異的抗体応答が誘導されるか検討した。 MVを電気泳動したところ、黄色ブドウ球菌由来MVには多数のタンパク質が含まれていた。アルファー毒素に特異的な抗体を用いてwestern blotting解析したところ、アルファー毒素が含まれていることが分かった。しかし、使用した抗体の特異性が低く、アルファー毒素以外のタンパク質も多数検出された。タンパク質の定量を行い濃度を決定した。このMVを抗原として免疫実験に用いた。初回および3週間後および5週間後に経鼻免疫した。追加免疫の前日および最終免疫から2週間後に唾液と血液サンプル、解剖時に鼻腔洗浄液を採取し、サンプル中に誘導されたMV特異的抗体応答についてELISA法で解析した。その結果、MV単独免疫群で免疫回数が増えるのにしたがい、血清中の抗原特異的IgG抗体レベルおよび唾液中の抗原特異的分泌型IgA抗体レベルが増加した。一方、黄色ブドウ球菌由来MVをpoly(I:C)と共投与した場合、抗原特異的抗体の誘導がほとんど起こらなかった。免疫回数が増えるのにしたがい抗体レベルは増加したが、非常に低レベルであった。アジュバントとしてハイドロキシアパタイトを用いた場合は免疫回数が増加しても抗体応答が誘導されなかった。鼻腔洗浄液中に誘導された抗原特異的分泌型IgA抗体も、MV単独投与群でのみ誘導された。従って、黄色ブドウ球菌由来のMVはそれ自体免疫原生を有し、経鼻免疫すると全身免疫および粘膜免疫を誘導することが分かった。しかし、黄色ブドウ球菌由来MVをアジュバント剤と共投与するとMVの免疫原性が阻害されることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度までに完了できなかった、電気泳動法による精製した黄色ブドウ球菌由来メンブレンベジクルの含有タンパク質の解析は遂行できたが、当初の計画である電子顕微鏡によるメンブレンベジクルの観察を完了することができなかった。当学部にある電子顕微鏡(走査電子顕微鏡)を用いて、メンブレンベジクルを観察したところ、ベジクル同士凝集して観察され、粒子の形状もはっきり観察することができなかった。倍率の調整もうまくできなかった。メンブレンベジクルの電子顕微鏡用のサンプル調整について技術を習得する必要が生まれた。 精製したメンブレンベジクルとアジュバント剤(polyI:C、ハイドロキシアパタイト)のマウスへの経鼻免疫実験では、免疫マウスの血液中、唾液中に誘導された抗体応答についてのELISA解析は行ったが、T細胞応答についての解析(免疫マウスから脾臓、頚部リンパ節を分離し、CD4陽性T細胞を分離し、in vitroにおいて抗原で再刺激し産生されるサイトカインの種類についての解析)にはいたらなかった。また、黄色ブドウ球菌由来メンブレンベジクルは単独で抗原性を発揮することが分かったが、最適な接種量についての検討ができなかった。血清中、唾液中に誘導された特異抗体の防御効果(黄色ブドウ球菌によるバイオフィルム形成の阻害、メンブレンベジクル接種マウスにおける黄色ブドウ球菌の定着阻害など)について検討することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、電子顕微鏡によるメンブレンベジクルの観察方法について試料の固定方法についての技術を習得し、本研究で精製したメンブレンベジクルの電子顕微鏡による粒子の形状や直径の確認を行う。本研究で、黄色ブドウ球菌由来のメンブレンベジクルは単独投与で十分な抗原性を発揮することが分かった。従って、メンブレンベジクルの投与量を変えてマウスに経鼻免疫し、誘導される抗原特異的抗体価について解析し、最適な投与量について検討する。同時に、経鼻免疫マウスの脾臓や頚部リンパ節で誘導されるT細胞応答について脾臓、頚部リンパ節、鼻咽頭関連リンパ組織、鼻腔リンパ球を回収し、in vitorで抗原で再刺激し、産生されるサイトカインについてELISA法で検討していく。 また、経鼻免疫マウスの血中に誘導されたIgG抗体を精製し、黄色ブドウ球菌によるバイオフィルム形成の阻害効果について検討する。さらに、経鼻免疫し、抗体応答が十分に誘導されたマウスに黄色ブドウ球菌を接種し、菌体の定着阻害効果について検討する。 また、本経鼻ワクチンの為害性について検討する。経鼻免疫したマウスの鼻腔組織、脳、嗅神経を採取し、各組織における炎症関連因子の遺伝子発現についてトータルRNAを精製し、リアルタイムPCR法で解析する。各組織での炎症誘発状況について解析し、生体への為害性について明らかにする。
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