2023 Fiscal Year Research-status Report
ワサビ含有成分を歯周炎治療に用いるための基礎的研究~抗炎症作用に着目して~
Project/Area Number |
22K09984
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
細川 義隆 徳島大学, 病院, 講師 (90346601)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 正 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 准教授 (00217770)
細川 育子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 講師 (50707908)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 歯周炎 / イソチオシアネート / erucin / 抗炎症作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周炎は歯周病原性細菌により惹起される慢性炎症性疾患であり過剰な免疫応答が歯周組織破壊に関与している事が明らかとされている。また、歯周炎治療には抗菌剤の局所投与が行われているが、耐性菌の問題により抗生剤以外の新たな抗炎症物質の使用が求められている。 今年度はルッコラなどのアブラナ科の植物に含まれるイソチオシアネートであるerucinに着目してその抗炎症作用に関して検討する事とした。その結果、炎症性サイトカインの1つであるTNF-alphaで刺激されたヒト口腔上皮由来細胞(TR146細胞)が産生する炎症性骨吸収に関与するIL-6ならびにTh1細胞浸潤・集積に関与するケモカインであるCXCL10産生をerucinが有意に抑制する事が明らかとなった。また、炎症性細胞の集積・定着に関与する接着分子の一つであるVCAM-1発現もerucinは抑制した。さらに、IL-6 やCXCL10産生に関与するシグナル伝達経路であるNF-kappaBならびにSTAT3の活性化ならびにタンパク合成に関与するシグナル伝達経路であるp70S6K-S6経路にerucinが影響を与えるか否かを検討したところ、erucinの前処理でTNF-alpha刺激でTR146細胞に誘導したNF-kappaB, STAT3ならびにp70S6K-S6経路の活性化は抑制された。 これらの結果からerucinはTNF-alphaがヒト口腔上皮細胞に誘導したサイトカイン産生や接着分子発現を減少する事で抗炎症作用を発揮する事が明らかとなった。また、そのメカニズムとしてerucinがNF-kappaB, STAT3ならびにp70S6K-S6のシグナル伝達経路の活性化を抑制する事が考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はワサビに様々な生理活性物質が含まれている事からこの研究を開始し、昨年度、ワサビに含まれるイソチオシアネートの6-(Methylsulfinyl) hexyl isothiocyanate (6-MSITC) が歯周組織構成細胞の一つであるヒト口腔上皮細胞に抗炎症作用を示す事を明らかとした。今年度は他のイソチオシアネート類が歯周組織構成細胞に抗炎症作用を示すか否かに着目し、ルッコラに含まれるイソチオシアネートのerucinがヒト口腔上皮細胞に抗炎症作用を示す事を明らかとした。1年目、2年目の研究で複数のイソチオシアネート類が歯周組織構成細胞に抗炎症作用を示す事を発見し、国際誌でその結果を報告できている事から、本研究は今年度もおおむね順調に進展しているものと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
1年目および2年目の研究でイソチオシアネートの6-(Methylsulfinyl) hexyl isothiocyanate (6-MSITC)ならびにerucinが口腔上皮細胞に抗炎症作用を発揮する事を明らかとした。今後は他の歯周組織構成細胞である歯根膜細胞や歯肉線維芽細胞に6-MSITCやerucinが抗炎症作用を示すかどうかを確認するとともに、動物モデルでも効果があるか検討する予定である。また、6-MSITCやerucin以外のイソチオシアネートにも着目してさらに多くの抗炎症作用を示す歯周炎治療に用いる事ができる候補となる生理活性物質を探索する予定である。
|
Causes of Carryover |
本年度は当初発表予定であった学会に参加できなかったため旅費に関して使用額が少なくなった。また、本年度の研究に必要な物品が予定より少額で賄えたため、次年度使用額が生じたと考えられる。翌年度分として請求した研究費と合わせて成果を発表するための旅費として主に使用する予定である。
|