2022 Fiscal Year Research-status Report
生活歯髄切断材料に対する抗酸化アミノ酸の応用~強アルカリによる歯髄刺激からの脱却
Project/Area Number |
22K10259
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中村 光一 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (50580932)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 薫明 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (40374566)
八若 保孝 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (60230603)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 生活歯髄切断 / MTAセメント / N-アセチルシステイン |
Outline of Annual Research Achievements |
FC(ホルモクレゾール)の発がん性を指摘されて以降、生活歯髄切断法(生切)は水酸化カルシウム製剤が主に用いられるようになった。水酸化カルシウム製剤はその効果が高くないことに加え、生体内での安全性に疑問を呈されており、近年では水酸化カルシウム製剤に代わるようにMTA(Mineral Trioxide Aggregates)セメントが用いられるようになってきている。しかしながら水酸化カルシウム製剤、MTAセメントともに強アルカリで細胞刺激性が強く、処置後の歯髄細胞に強い炎症所見が確認されることが言われている。そこで本研究ではMTAセメントをベースとして、NAC(N-アセチルシステイン)を利用し、強アルカリを中性に近づけることにより細胞刺激性が弱く、石灰化誘導作用を有するセメントの開発を目標とした。 今年度はラットに生切を行ない、組織学的変化の観察を行なった。具体的には、まず4週齢のSDラットの上顎臼歯に生切を行なった。生切後、MTAセメント(MTA)ならびにMTAセメントにNACを配合したもの(MTA-NAC)で覆髄した。上部はスーパーボンドで封鎖した。コントロールはセメントで覆髄せずにスーパーボンドで直接封鎖した。生切後、3日後、1週間後、1か月後にラット臼歯を摘出し、組織を脱灰、固定し、薄切切片を作製し、HE染色を行なった。いずれにおいても3日後では切断面に炎症性細胞浸潤を認め、デンチンブリッジの形成を認めなかった。1週間後では、MTA-NACでデンチンブリッジの形成を確認できた。その他ではデンチンブリッジの形成を認めなかった。1か月後の試料は現在切片の作製ならびに染色を行う段階である。現時点ではNACをMTAセメントに添加することにより石灰化を誘導することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては動物実験であるラット臼歯に対する生切が最も時間がかかり、想定通りの結果が出るかが問題であったが、現時点では想定通りにNACが石灰化を誘導している。1か月後の結果がどうなるか次第ではあるものの、1週間後の結果で石灰化の誘導を示唆していることから、1か月後でも同様の結果が出てくるのではないかと期待している。
|
Strategy for Future Research Activity |
組織切片の作製、解析を進める。その上でさらに動物実験が必要と判断すれば追加で行う。動物実験後はラットの歯髄細胞を採取し、石灰化誘導メカニズムの解析をin vitroで進める。メカニズムの解析は、ウエスタンブロッティング法ならびにPCR法を計画している。
|
Causes of Carryover |
2,652円の次年度使用額が生じた。誤差の範囲であり、翌年度に試薬購入費用として使用予定である。
|