2023 Fiscal Year Research-status Report
Creation of a dental skill distance education system incorporating a clinical skill AI evaluation engine
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22K10308
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小関 健由 東北大学, 歯学研究科, 教授 (80291128)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹田 奈緒子 東北大学, 歯学研究科, 講師 (00422121)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 臨床技能 / 機械学習 / 技能評価 / 支形成形成 / スケーリング / プロービング |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科臨床では手指技能が関与する臨床操作が多く、その教育には多くの時間と労力が必要である。この実習現場では技能の直接指導が中心で有り、評価指標が少ないことが問題となる。COVID-19感染症流行後のNew Normal の取り組みの中において、効率的な歯科技能遠隔教育を構築するために、我々はこれまで歯科臨床技能、特に力の見える化を実現するTraining Gadget 教育システムを、ICTを活用して構築してきた。本研究では、プロービング、スケーリング・ルートプレーニングや補綴処置の歯冠形成の臨床操作教習をモデルとして、歯科臨床技能操作大規模データベースを構築する。さらに、それを基に遠隔自動評価AIエンジンを開発し、それを活用した歯科臨床技能学習プログラムを構築して、学習者単独で完全自動化で初習から習熟までの臨床技能学修を行う歯科技能学修システムを創出する。特に本システムの特徴は、これまで活用されてこなかった力の明示による技能教育である。世界の教科書に於いても歯科臨床技能の力に関する記載は極端に少なく、力を中心に据えた技能教育は未開の教育方法である。さらに遠隔技能学習においては、双方向の会議形式のWEBカメラを用いた授業では、姿勢や器具の操作手順や動作をリアルタイムで伝授することは可能であるが、唯一、伝達不可能な技能は、器具にかける力や方向の教授である。これは、遠隔授業にのみ関わる問題では無く、従来の対面授業での実習でも、同様に伝達することが困難な技術要素である。この力の明示化と技能教育への応用を実現したのがTraining Gadget 教育システムであり、本研究ではこのシステムを大きく進化させていく。この成果を元に、歯科臨床技能AI評価エンジンとICTを活用した歯科臨床技能統合学修・評価システムの開発の課題に取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度の研究として、「下顎右側第一大臼歯の金属冠の形成」を構築した歯冠形成技能収集装置にて取り込んだ臨床医の歯科臨床技能の評価法について、様々な指標を用いて評価法の検証を行った。特に熟練者に於いて、削合時に歯にかける力には相当な幅があるが、掛かっている力の揺らぎが少ないことが大きな特徴として観察されたために、適正な力を抽出する事と共に、切削時の安定性(ゆらぎ)の評価法の設定に取り組んだ。しかしながら、正当な・正しい歯科臨床技能に関しては、それぞれの熟練者の持つ固有の特徴が目立ち、一般化が困難な状況にあった。そこで、評価法を細分化して、個々の動きを多くの小項目に分解して評価する方法の確立に向けて、臨床技能の収録を継続している。 一方で、「歯周プローブを用いたプロービングによる根面探査」の歯科臨床技能の収録・評価に関しては一定の進展が見られた。本実験用に改良したTraining Gadgetを用いて、歯周プローブにて下顎右側第一大臼歯の根面探査を行った際に、歯周プローブ先端が根面に接触する時の動かし方と力を評価し、さらにその結果をフィードバックして、その場でリアルタイムに自分の技能を確認できる方法を考案した。この仕組みを組み込んだTraining Gadgetを制作し、更に自ら実習ができる歯科臨床技能自習システムの構築のためのコントロールアプリを制作した。これらの自習システムを用いた歯科臨床技能自習システムの有効性を確認する実験の準備を整えた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度の研究成果を踏まえて、最終年度の課題として、まず歯冠形成技能収集装置の技能評価方法の確立が必要である。評価法の確立が足踏みした状態であったが、新たな細分化した評価法を用いて、リアルタイムの歯科臨床技能の評価をフィードバックし、実習のその場で歯冠形成技能を習得できる学習システムの構築を、歯冠形成技能収集装置を用いて行なっていく。同時に、歯冠形成の技能収録データベースを拡大し、各熟練度の技能を収集し、歯冠形成時の熟練者の特徴まで分類化できると、更に歯科臨床技能に関する理解を深め、学習システムの教示内容を変化させることができ、より効率的な学習を実現できるシステムが構築できると考えている。 一方で、プロービング歯科臨床技能自習システムの学習効果を検証する実験を歯科衛生士学校学生や研修医を対象として実施し、学習効果に基づく学習法の改良・調整を行う。この結果は、令和3年度に実施したスケーリング・ルートプレーニング操作のデータベースに投影し、プロービングに加えてスケーリング・ルートプレーニングを含む歯周治療技能自習システムの構築を目指す。 これらの成果から生まれた歯科臨床技能自習システムは、遠隔授業にも応用が可能であろう。これを検証するために、授業を受け持つ講師と生徒の直接的接触による技能伝達があるステップを見つけ出して代替方法で補完すれば、完全な歯科臨床技能自習システムを用いた遠隔授業を実施できる。最終年度はこの構築までの研究を実施する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍での様々な社会的な制限が生じ、5類へ分類されてからも様々に余波が残っている。教育現場への人の出入りに関しても制限解除の審議等の手間があり、現場の状況を見ながらの歯科臨床技能収集であった。その理由により教育現場への出動の減少があり、その代替としてデータベースの解析等の時間が増加して、この分野を繰り上げる形で研究を進めてきた。よって、研究内容の配分の変化で、次年度使用額が生じる事態となった。しかしながら今年度は、教育現場での歯科臨床技能データ収集の実施の比率が増え、繰り越した研究資金を投入する必要が生じてくる。最終的に目指す研究成果と研究内容には変化がないので、研究費の総額は変化しない。
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