2023 Fiscal Year Research-status Report
口腔の形態喪失・機能低下と全身の健康に及ぼす歯科的介入効果の医療ビッグデータ解析
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22K10353
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
嶋崎 義浩 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (10291519)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 口腔機能低下 / 口腔状態 / 歯科保健医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高齢者や職域成人等の保健・医療関連ビッグデータを活用して、歯科健診・口腔保健指導等の歯科的介入による口腔の形態・機能の改善効果、医療費を含む全身の健康状態への影響を分析し、歯科保健医療による口腔および全身の健康増進効果を検証するものである。 後期高齢者の歯科・医科の健診データおよび医療費のビッグデータの解析を前年度から引き続き行った。医療費レセプトで対象者の歯科受診状況を把握したところ、口腔健康状態および口腔保健行動は高齢者のフレイルと関連していることが明らかになった。厚生労働省が示す歯科治療の需要の将来予想では、歯科治療は歯の形態の回復から口腔機能の維持にシフトしていくことが示されている。高齢者の口腔の健康維持や良好な口腔保健行動は、高齢者のフレイルの予防に貢献できる可能性がある。 協会けんぽ加入事業所の従業員を対象に行った調査結果から、職域成人における電子タバコ、加熱式タバコ、紙タバコの喫煙状況と歯周状態および現在歯数との関連を検討して学会にて報告した。同様に、職域成人を中心とした健診ビッグデータをもとにした分析により、歯周炎とCOPD(慢性閉塞性肺疾患)との関連について、歯周炎とメタボリック症候群の発現、また口腔健康状態とロコモティブシンドロームとの関連について、それぞれの研究成果を国際学術雑誌に報告した。 また、職域成人の調査データをもとにした分析から、職域成人におけるHbA1cに関連する要因の性差、糖尿病要注意者の歯周状態に関連する要因について検討した。 これらの結果は、口腔の健康維持に必要な事項や対策を検討する基となり、また歯科保健医療による口腔および全身の健康増進効果を示す根拠となるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では複数のビッグデータをもとに研究を行う予定である。後期高齢者を対象とした研究では、概ね順調に分析作業を進めることができており、研究成果を国際的な学術雑誌に報告する予定である。 職域成人を対象とした研究では、協会けんぽの従業員に対して実施した歯科健診、アンケートの結果を、医療保険者が管理する一般健診および医療費レセプトデータと連結して研究を行うが、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、学外の協力者との打ち合わせ等が難しく、データ提供に時間を要していることなどがあり、当初の計画よりもデータの準備が遅れている。健診機関から提供を受ける職域成人データについては、データ分析、研究成果の報告等を実施できている。今後は、協会けんぽのデータベースの準備が出来次第、口腔と全身の健康の関連について研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
後期高齢者のデータ分析については、口腔状態や歯科受診とフレイルとの関連について分析を行う予定である。また、健診結果および医療費の経年データを連結して追跡的なデータとして分析可能な状態にすることで、口腔の健康と全身の健康および医療費との縦断的な関連を調べていく。そのことにより、高齢者における口腔の健康と全身の健康の関連についてよりエビデンスレベルの高い結果を示すことができると考えている。 職域成人を対象とする研究では、協会けんぽの調査データを整理し、電子化データのデータクリーニング、歯科健診データ・アンケートデータと特定健診データ及び医療費レセプトデータを連結した後に、データ内容の確認作業を行い、データベース構築後速やかにデータ分析を開始する予定である。研究内容としては、口腔の健康状態が全身の健康や医療費に及ぼす影響、歯科受診と口腔の健康および全身の健康との関連、歯科健診および保健指導後の歯科受診に対する行動変容と全身の健康状態との関連等について分析を行っていく予定である。 また、特定健康診査を含む健康診査を実施している健診機関において、一般健診に加えて歯科健診を受診した集団データを分析することで、口腔の健康と全身の健康との関連を新たな集団の結果として明らかにしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究は、以前に申請した研究課題から継続して行う研究であり、本研究と同様に、以前の研究課題についても、新型コロナウィルス感染症の拡大の影響により研究の遂行に遅れが出ている。そのため、本年度に使途する予定の研究費は、実施が遅れている以前の研究課題の研究費で賄っていることもあり、次年度使用額が発生した。次年度使用額が生じた研究費については、継続して行う本研究の調査研究に使用する予定である。
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