2023 Fiscal Year Research-status Report
AYA世代の肝移植レシピエント患者の服薬アドヒアランス維持の要因と評価方法の検討
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22K10483
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Research Institution | 株式会社関西メディカルネット(関西電力医学研究所) |
Principal Investigator |
吉澤 淳 株式会社関西メディカルネット(関西電力医学研究所), 外科(神経内分泌腫瘍・乳癌)研究部, 上級特別研究員 (60457984)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 服薬アドヒアランス / 肝移植 / AYA世代 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓移植後に拒絶反応を予防するために免疫抑制療法は重要である。その免疫抑制剤の内服状況についてアンケート調査を行った。アンケート対象は小児時期に移植を行った患者を対象に、小児期から成人期にかけて広くアンケート調査を行った。小児患者のアドヒアランスはおおむね良好であった。内服の管理が自己管理にゆだねられる小児期から成人期にかかる、いわゆるAYA世代の服薬アドヒアランスが一部不良となり、完全に自立した成人と比較して不安定になる傾向が認められた。 内服状況の評価とアンケート調査の結果の一致性を調べるために、免疫抑制剤の薬物血中濃度(免疫抑制剤のトラフ値)、移植組織に対する免疫応答性を反映すると考えられる抗ドナー特異的HLA抗体の有無、実際の移植肝組織(肝生検病理診断)による拒絶反応の有無および肝線維化の有無を用いて評価を行った。免疫抑制剤のトラフ値はアンケート調査から考えられるアドヒアランスの状況との間に相関は特に認めなかった。一方、抗ドナー特異的HLA抗体の有無とアドヒアランスの状況については有意差をもって、相関を認めた。さらに、アドヒアランスの良好さの程度と抗ドナーHLA抗体陽性率の間にも相関があり、アドヒアランスの評価のスコア化に有効な指標が作成できる可能性が示唆される結果であった。また、組織学的変化についてはアドヒアランスの状況との相関に傾向はみられたものの、統計学的に有意差は認めなかった。 内服アドヒアランスと生活習慣、内服状況、社会環境(学生であるか社会人であるか)などについて、改めて検討を行ったが、アドヒアランス改善や悪化などに寄与する因子は抽出されなかった。一方で、医療側のかかわり(とくに医師以外の診療相談や聞き取り調査などによる内服状況の把握や介入)がアドヒアランス良好との間に有意差のある因子として抽出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アンケート調査から得られた情報の解析については順調に行っている。 今回の研究ではさらにprospectiveな検討を含めて、再アンケート調査を行う計画もあったが、それについては実現は難しい状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、得られた知見について、論文報告を通じて成果としていく予定である。 その際に、ほかの要因について、追加で調査が必要であれば、行う予定である。
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Causes of Carryover |
出張、学会発表の予定であったが、WEB参加などにより、支出が少なかった。さらに、アンケート調査などに予定していた費用がかからなかった。 統計学的処理のためのソフトウェアの購入などが越年し、論文校正などの支出が次年度に持ち越されたため、それに使用する予定である。
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