2023 Fiscal Year Research-status Report
ヘマグルチニンの抗原性多様化に対応可能なカクテル型インフルエンザワクチンの開発
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22K10517
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
後川 潤 川崎医科大学, 医学部, 助教 (00299182)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / ヘマグルチニン / N型糖鎖 / ワクチン / カクテルHA抗原 / リコンビナントタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
感染症予防や感染拡大抑止にはワクチンが必要不可欠である。インフルエンザは人々の健康だけでなく、社会活動にも影響を及ぼす感染症の一つであり、国内ではその予防対策として不活化ワクチンが使用されている。ワクチン製剤の主要抗原タンパク質であるヘマグルチニン(HA)の主要抗原領域には複数のアスパラギン結合型(N型)糖鎖修飾配列が存在し、N型糖鎖の有無はウイルスの性状や抗原性に影響する要素の一つであることが先行研究によって明らかになっている。特にHAの遺伝子変異頻度が高く、抗原性が多様化しやすい香港型インフルエンザウイルスでは、ワクチン製造株と市中流行株間の抗原相同性の不一致により、ワクチンの有益性が損なわれることが多い。本研究では、現行のHAワクチンの有益性向上を目的として「抗原性変異に対応可能なカクテル型HAワクチンの開発」に取り組んでいる。本年度は以下の成績を得た。①HA主要抗原領域のN型糖鎖プロファイルが異なるように設計したプラスミドを細胞に導入してリコンビナントHAタンパク質(rHA)を発現させて回収した。②精製した複数のrHAタンパク質をカクテル化し、rHA抗原を作製した。②カクテルHA抗原をモルモットに免疫して抗血清を作製し、抗血清とウイルス株との反応性をin vitro実験で検証した。③カクテルHA抗原をワクチンとしてマウスに接種した後、ウイルスをチャレンジ感染させてワクチンによる防御効果を検証するin vivo実験を実施した。その結果、カクテルHA抗原により誘導された抗血清は、単一HA抗原に由来するものよりも広域かつ強力な中和活性を示す結果が得られた。また、in vivoにおける検証においても高い防御効果を示す傾向が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ワクチン製剤の 抗原となるHAタンパク質の作製方法を、ウイルス粒子から抽出・精製する方法からタンパク質発現系を用いてリコンビナントHA(rHA)タンパク質を用いる方法に切り替えた。rHAタンパク質が抗原として免疫原生があり、抗体産生を誘導できることが確認できたため、カクテルHA抗原を用いたin vitroおよびin vivo実験が効率化でき、これまでに仮説を支持するような成績が得られている。今後の課題として、rHAタンパク質の回収・精製をより効率化することで動物感染実験によるワクチン効果の検証やワクチンとしての安全性の検証が可能になると考えられるため、新規のタンパク質発現・精製の方法も検討しつつ研究を進展させる。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19パンデミックによってワクチンが感染症予防や感染拡大抑止には必要不可欠であり、ワクチンの「有益性」が周知された反面、副反応などを含めた「安全性」もクローズアップされた。故にワクチンに含まれる成分や抗原タンパク質の量などに関する検証が重要であると考えられる。本研究では臨床応用に向けたワクチン改良を推進する過程において、安全性についても動物実験等で検証を行う。
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Causes of Carryover |
使用予定の物品や試薬のについて、国内在庫等の関係により年度内の納品が困難な場合がいくつか生じ、さらに、搬入予定の動物の飼育管理において搬入時期の調整が必要であった等の理由により次年度へ繰り越した。繰越し分は新規の細胞株(タンパク質発現用)および実験動物購入に充てる。
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Research Products
(2 results)