2023 Fiscal Year Research-status Report
A prospective study on work climate and help-seeking intentions for balancing medical treatment and job during the COVID-19 pandemic
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22K10536
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
山内 貴史 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (10598808)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 職場風土 / 治療と仕事の両立支援 / 新型コロナウイルス感染症 / 中小企業 / 経営者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度研究では、小規模事業場の労働者を対象として、新型コロナウイルス感染症流行下における職場の協働的風土および経営者の職場風土への態度と、両立支援の申出意図との関連を職種別に分析することを目的とした。 従業員数10~49人の企業に勤務する20歳~64歳の正社員1,800人を対象としたオンライン調査を実施した。対象者はわが国の業種・性・年齢階級別の従業員数構成比と整合するようサンプリングされた。産業保健スタッフの在不在などの業務関連要因および基本属性の影響を調整したうえで、職場の協働的風土(弱、強)と経営者の職場風土への態度(経営者関心なし、経営者関心あり)との組合せ変数(「風土×経営者態度」)およびコロナ禍前後での協働的風土の変化を主たる説明変数、両立支援の申出意図を目的変数とした多変量2項ロジスティック回帰分析を実施した。また、職種(ホワイトカラー、ブルーカラー)による層別解析を施行した。 分析対象者のうち、1,350人(75.0%)が両立支援を「申し出る」と回答した。2項ロジスティック回帰分析の結果、風土弱・経営者関心なし」群と比較して、「風土強・経営者関心なし」群(オッズ比:1.5、95%信頼区間:1.07-2.1)および「風土強・経営者関心あり」群(オッズ比:2.0、95%信頼区間:1.4-2.9)では「申し出る」が有意に多かった。職種による層別解析の結果、職種を問わず、「風土弱・経営者関心なし」群と比較して、「風土強・経営者関心あり」群では「申し出る」が有意に多かった(ホワイトカラー、オッズ比:2.2、95%信頼区間:1.3-3.8;ブルーカラー、オッズ比:2.0、95%信頼区間:1.1-3.3)。 以上の結果から、職場の協働的風土の醸成、および風土醸成への経営者の関心・理解の促進によって、職種を問わず小規模事業場の労働者の両立支援の申出を促進し得る可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目に実施した、新型コロナウイルス感染症流行下における労働者および学生の援助希求行動(援助要請行動)のスコーピングレビュー(Yamauchi T, et al. Environ Health Prev Med. 2023;28:53)の成果を踏まえた新規の労働者調査を実施し、成果を原著論文として投稿できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度研究では、社会心理学領域を中心とした援助希求(援助要請)研究の成果も踏まえ、両立支援の申出という援助希求行動を行いやすい環境としての職場風土とともに、個人内要因としてのパーソナリティに着目する。両立支援の申出意図に及ぼす環境要因(職場風土)と個人内要因(パーソナリティ)との交互作用を想定し、新型コロナウイルス感染症流行以前と比較しての両者の交互作用と両立支援の申出意図との関連を分析可能な調査設計とする。 調査対象者は2022年度・2023年度研究に引き続き小規模事業場に勤務する労働者とする。中小企業はわが国の企業数の99%、雇用の約7割を占めている。職場風土や経営者の風土への関心を中心に小規模事業場の労働者の両立支援の申出を促進または抑制し得る要因を明らかにすることで、事業場内での既存の制度や産業保健活動で注力すべきポイントがより明確となることが期待される。
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Causes of Carryover |
概ね計画通りに使用できている。学会発表に係る費用を別経費で支出できたため、若干の次年度使用額が生じた。次年度の調査費に充当させる。
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