2022 Fiscal Year Research-status Report
虐待による乳幼児頭部外傷の早期発見に資するベイズ理論に基づく臨床予測モデルの開発
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22K10608
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
小谷 泰一 三重大学, 医学系研究科, 教授 (20330582)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 虐待による乳幼児頭部外傷 / ベイジアンネットワーク / 児童虐待 / 臨床予測モデル / 乳幼児突然死予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、乳児健診や病院受診時に発症を予測したり診断することが難しい一方で、見逃すと後日、命にかかわる事象が発生する確率の高い“虐待による乳幼児頭部外傷(Abusive Head Trauma, AHT)”の予防法の確立を目指している。そのためには乳児期のなるべく早い時期に、それぞれの子どもが虐待されるリスクを予測できる方法を開発すれば、母親などの養育者への育児指導の時に、その児に合わせた予防法を伝えることができ、虐待を予防することに繋がると考えている。そして、人工知能で利用されている数理統計学的手法を用いて、1ヶ月健診などでの問診データなどを入力することで、その児に合わせた予防法を提示するAHT発症・発見予測モデルの構築を試みている。 そこで、本年度はまず、モデル構築に必要な学習データとして活用する目的で、養育者による児童虐待が疑われて児童相談所に一時保護され、当施設に法医学鑑定を依頼された児に関する情報の解析を開始した。2020年8月以降に当施設に依頼された児童相談所一時保護児童すべての記録を後方視的に解析した。そして、虐待の早期発見や発症予測に有用と考えられる要因の抽出・ワークシートデータ作成を試みた。抽出を試みた要因は年齢・性・きょうだいの有無・出生時体重・妊婦健診受診歴・乳児健診受診歴・養育不全カテゴリ・虐待の種類・家族構成・養育者自身の虐待歴/DV歴/離婚歴等である。そして、これらのデータを構造学習機能を有するモデル構築支援ソフトへインポートするために、研究代表者による専門的見地からカテゴリ化等を施した。 なお、今年度に行った上記の後方視的解析から副次的に得られた知見を招待講演で紹介したり、本研究の前段階として遂行してきた“乳児突然死予防に資する診断・発症予測モデル構築”の研究成果を国際雑誌で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、下記に示す3つのstepでの研究遂行を計画している。Step 1:自験例を学習データとしてベイジアンネットワークを構築する、Step 2:文献・医療統計を用いて学習データ数を増加させることで確率分布を更新する、Step 3:新たな臨床症例を検証データとして用いてモデルを検証する、の3 stepである。 今年度は上記Step 1の完遂を目指した。このStep 1では計画当初、研究代表者が前任地で経験した法医解剖例や警察・児童相談所鑑定依頼症例のデータをAHT発症予測モデル構築のために改めて分析し直す予定であった。しかしながら、研究を進めている過程で、代表者が想定以上に新たな児童虐待例に関する鑑定依頼を現在の赴任地にある児童相談所から受託するようになり、それらの症例からはこれまで以上に詳細な情報が得られることに気づいた。そこで、まずはこれらの症例のデータをワークシート化し、モデル構築用にカテゴリ化できた時点で、AHTの発症・発見予測を実行できるベイジアンネットワークを構築することにした。そして、現時点ではそのデータのワークシート化が進んでいる。以上のように、より精度の高い発症予測モデルを構築するために、その前段階として膨大なテキストデータからなる児童相談所症例から適切なデータを抽出することを試みたために、当初の計画よりやや遅れている。しかしながら、今年度のこの研究成果は当初の計画をより精度高く完遂するためにはむしろ必要な研究段階であったと考えられるので、次年度以降の研究をよりスムーズに遂行させてくれると期待している。さらに、今年度の成果のみでも1つの新たな研究成果として発表できる内容の可能性があり、今後さらに深める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究業績の概要や現在までの進捗状況で前述したように、今年度は児童相談所一時保護児童の情報から児童虐待の早期発見や発症予測をできるベイジアンネットワークの構築に必要なデータの抽出や解析を進めたので、まず次年度前半でこれをより精度の高いものに完成させる。また、今年度は児童相談所症例の解析を行ったが、より信頼度の高いモデルにするには前任地の症例や文献・臨床統計のデータを利用した方が良いと考えられる。そこで、今年度の児童相談所症例のデータ解析をひな形として、前任地症例等のデータを追加することでより信頼性の高いモデルを構築できるデータを準備する。そして、可能ならば児童相談所症例のデータ解析結果を学会や講演などで発表する。 なお、他大学の留学生やビッグデータを用いて児童虐待に関するモデル構築を試みている研究者から本研究への参画や協力の希望が研究代表者に届いている。現在、代表者の所属する機関には大学院生が不在のため、これらの共同研究希望者と連携できれば研究遂行がより順調になると期待され、今年度の遅れを取り戻せる可能性がある。
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Research Products
(3 results)