2022 Fiscal Year Research-status Report
覚醒剤の毒性発現の個人差に影響する遺伝的要因の解明
Project/Area Number |
22K10623
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
松末 綾 福岡大学, 医学部, 講師 (70309920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 真一 福岡大学, 医学部, 教授 (10205122)
石川 隆紀 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 教授 (50381984)
柏木 正之 福岡大学, 医学部, 准教授 (70301687)
ウォーターズ ブライアン 福岡大学, 医学部, 講師 (00609480)
高山 みお 福岡大学, 医学部, 講師 (40804802)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 覚醒剤 / 遺伝子多型 / 剖検例 |
Outline of Annual Research Achievements |
Dopamine D2 receptor(DRD2)およびankyrin repeat and kinase domain containing 1(ANKK1)に存在する複数の遺伝子多型が薬物作用の個人差に影響を及ぼす可能性が報告されている。本研究では、覚醒剤中毒死症例並びに向精神薬中毒死症例を含む剖検例について、DRD2/ ANKK1遺伝子のTaq1A多型並びに-141C Ins/Del 多型の解析を行い、薬物濃度および死因との関連性について検討を行った。 覚醒剤中毒死症例29例、覚醒剤が検出されていない向精神薬中毒死症例38例、覚醒剤未検出症例292例、向精神薬未検出症例235例について、Taq1A多型をリアルタイムPCRで、-141C Ins/Del 多型をPCR-RFLP法で判定した。その結果、-141C Ins/Del 多型については、覚醒剤中毒死並びに向精神薬中毒死症例のいずれにおいても、覚醒剤もしくは向精神薬未検出症例との間に差異は認められなかった。Taq1A多型においては、minor alleleであるA1 allele保有者(A1A2またはA1A1)の頻度が、覚醒剤未検出症例に比して、覚醒剤中毒死症例で有意に高かった。また、血中覚醒剤濃度との相関は明らかではなかった。一方、向精神薬中毒死症例と向精神薬未検出症例との間に差異は認められなかった。Taq1A多型は、DRD2遺伝子の下流に位置し、ANKK1遺伝子にmissense mutationを生じることが知られており、薬物への反応性、アルコールやオピオイドなどへの依存との関連性が報告されている。今回の結果から、DRD2/ ANKK1遺伝子のTaq1A多型は覚醒剤の乱用、中毒に影響を与えている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
法医剖検例について、覚醒剤の毒性に関与している可能性のある遺伝子の多型を解析し、その影響を調べた。しかし、別の研究課題に加えて、鑑定業務が増えたために本研究を行う時間を充分に確保できず、今年度検討する予定であった遺伝子の一部しか解析できなかった。また、解析した候補遺伝子のうち、覚醒剤の毒性と関連がある可能性のある遺伝子も認められたが、関連が認められない遺伝子も多かった。今後、より多くの関連遺伝子を調べる必要性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、覚醒剤中毒死症例、覚醒剤摂取症例ならびに薬毒物未検出症例について、覚醒剤の毒性に関与しているより多くの遺伝子の多型解析を行い、その影響を考察する。遺伝子解析と並行して、覚醒剤が検出された法医剖検例を研究期間内に集積する。また、血液や尿だけでなく、様々な体液における覚醒剤濃度を測定する。血液や体液からの生化学検査も行い、それらのデータと遺伝子多型との関連を調べていく。さらに、覚醒剤摂取症例ならびに薬毒物未検出症例の脳から抽出したRNAを使用してリアルタイムPCRを行い、遺伝子発現の増減を調べる。増減が確認された遺伝子について、脳から抽出したタンパク質を使用してウエスタンブロッティングを行う。
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Causes of Carryover |
今年度は遺伝子多型の解析を行う予定であったが、一部の遺伝子解析しか行うことができず、残りの候補遺伝子の解析を次年度に行うことに変更したため、必要な経費が当初見積りより少なくなった。次年度も引き続き候補遺伝子の多型を解析し、ダイレクトシーケンス法、TaqMan法、RFLP法を行うために必要な試薬を購入する。遺伝子解析用のソフトウエアもサブスクリプションで購入する。また、遺伝子の発現を調べるために、リアルタイムPCRとウエスタンブロッティングを行うため、抗体や検出試薬などを購入予定である。
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