2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K10964
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
牧原 由紀子 国際医療福祉大学, 成田保健医療学部, 准教授 (20776041)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森野 佐芳梨 大阪公立大学, 大学院リハビリテーション学研究科, 講師 (10822588)
坂本 飛鳥 西九州大学, リハビリテーション学部, 講師 (90758715)
竹中 奈々 国際医療福祉大学, 成田看護学部, 助教 (90921908)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 産後疲労 / 慢性炎症 / 心拍変動 / 産後うつ病 |
Outline of Annual Research Achievements |
産後女性の多くが経験する重度の疲労は産後うつ病発症のリスクファクターであり、産後うつ病を引き起こす前に産後疲労を改善することが産後うつ病の予防となる。本研究では産後疲労の客観的かつ定量的な評価法開発にあたり、疲労の背景にある慢性炎症という生理的な病態に着目した。慢性炎症の程度は心拍データを周波数解析することで定量化でき、これまでの主観的評価に代わる客観的な疲労評価指標になり得る。2022年度は産後1年までの女性(産後女性)を対象に主要評価項目として心拍変動(超低周波領域成分: Very Low Frequency: VLF)を測定し、産後疲労の誘因となる慢性炎症の程度を推定した。そして慢性炎症の程度と疲労に関するアンケート(Multidimensional Fatigue Inventory: MFI)の結果における相関を解析し、両者の関係性を検証した。 46名の産後女性が測定に参加した。MFIの結果は61.2±0.5点であり、先行研究で報告されている同年代の日本人女性の結果を上回り、産後女性の自覚的疲労は産後でない女性と比較して高い傾向にあることがわかった。さらにMFIとVLFの相関関係はr=-0.57 (p<0.05) であり、自覚的疲労が高いほどVLF値が低いことが示された。VLF値は低いほど慢性炎症の程度が高いため、疲労の背景に慢性炎症があることが示唆された。研究結果の途中経過は学会で発表し、現在はコントロール群の測定およびこれまでのデータをまとめて解析中である。産後女性において、出産方式(経膣分娩と帝王切開)による疲労度や炎症の程度に違いがある傾向が示されたため、その点においても解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間3年間のうち、初年度で産後疲労と慢性炎症の関係を示し、残りの2年間で運動療法による抗炎症作用と疲労の軽減効果について介入研究を行う予定である。2022年度終了時点で初年度のデータ解析を終え論文執筆に取り掛かっている予定であったが、初期の参加者募集に時間がかかったため、現在データ解析中である。同時に介入研究についても倫理審査の申請をしており、現在審査中である。全体として少しの遅れはあるものの、おおむね順調に伸展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年からはランダム化比較試験を実施する。参加者は、産後うつ病発症が急増する産後4ヶ月から産後1年までの女性100名とし、担当医師から低ー中程度の運動強度(本研究で用いるエクササイズと同程度)を許可された女性のみとする。運動介入は自宅でできるエクササイズとして、ピラティスを基本とした運動療法をオンライン動画で処方する。調査項目は①運動量、②慢性炎症(VLF値:疲労の客観的指標として)、③主観的疲労である。ベースライン測定として、参加者は送付された計測デバイスを用いて自身で睡眠中の心拍データをデバイス内に記録し(②)、主観的疲労を記録する(③)。その後、参加者は運動介入群あるいは対照群にランダムに振り分けられる。運動介入群にはビデオクリップのURLを周知し、最低週3日、動画を視聴しながら自分も同じ運動を行うよう指導する。同時にどのビデオをいつ、何回視聴し運動したかをダイアリーに記録する(①)。1日の中でいつ、またいくつのビデオクリップを視聴するかは参加者次第とするが、上限は週10クリップとする。運動介入は12週実施する。参加者は毎週1回、自身で睡眠中の心拍データをデバイス内に記録し、ダイアリーの集計と主観的疲労に関する質問紙の回答をオンラインで申請者へ送付する。12週の運動介入終了後、1週後と4週後に再度②と③の計測を実施したのち、計測デバイスを申請者へ返送する。対照群については、②と③のみデータを12週、さらに1週後と4週後に測定する。全ての測定終了後、介入群と同じビデオクリップのURLを送付し、自由に視聴できるよう配慮する。12週におけるVLF値の変化を介入群と対照群で比較し、運動介入が慢性炎症の改善、すなわち疲労の改善につながるかを検証する。
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Causes of Carryover |
2022年度はコロナ禍であったため、国際学会へ参加できず旅費が発生しなかった。また研究者がすでに所有していた機材を一部使用することができ、2022年度の測定を行う上では支障がなかったため、物品費も予定額を下回った。ビデオクリップの作成費についても完成が2023年度となったため、2022年度は費用が発生しなかった。以上より次年度使用額が発生した。2023年度はコロナウイルス感染症の分類が変更され、国際渡航が可能となるため国際学会への参加を予定している。またビデオクリップを完成し、介入研究を実施するため、2022年度より多くの機材が必要となる。2023年度分として請求した助成金と合わせ、上記の計画に基づいて使用する。
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