2022 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の褥瘡予防を目的とした新機能を装備したティルト・リクライニング車椅子の開発
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22K11303
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
小原 謙一 川崎医療福祉大学, リハビリテーション学部, 教授 (10412256)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 臀部ずれ力 / 背張り機能 / ティルト機能 / リクライニング機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、車椅子のリクライニング機能とティルト機能の併用によって拡大する褥瘡発生因子である臀部ずれ力の変動幅を軽減させるための車椅子の新たな機能を開発することを目的としている。我々の先行研究から、ティルト機能によって椅子の座面と背もたれを一体で後傾させることで背もたれからの反力、背もたれと身体背部間の摩擦の影響をより大きく受けることが示唆されている。 そこで2022年度では、背張り機能をリクライニングとティルト機能に併用した際の臀部ずれ力変動への影響を検討した。対象は健常成人男性14人とし、脊柱後弯変形を有する高齢者を想定して、体幹装具によって対象者の脊柱を後弯位で固定させたうえで実験を実施した。その結果、背張り機能を併用することでリクライニングによる背もたれ後傾時の臀部ずれ力は、背張りを併用しない条件と比較して有意に軽減し、後傾時の体幹の相対的ずれ幅は、有意に低値を示した。このことから、背張り機能を併用することで、車椅子を後傾させる際に臀部ずれ力は軽減させ得るが、それは後傾時に必然的に下方へ滑る身体を背張りベルトによってひっかけることで下方へ滑ることを阻害していることが示唆された。したがって、背張り機能の併用では車椅子後傾の際に大きく影響を受けることが明らかになった。そして、その際に身体を引き上げられているような感覚になることから、臀部ずれ力による褥瘡発生の危険性のみならず、背部の不快感に対しての配慮が必要となることが本研究から明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
試作する新機能を備えた背もたれの完成が遅れている。この背もたれは特注品であるため、設計やフレーム金属の加工に時間がかかっているが、夏までに完成できるとの報告を得ている。 2022年度の成果は第38回日本義肢装具学会学術大会にて発表し、その内容を国際誌に投稿、現在査読結果を待っている状態である。 一方、上述の背もたれを使用しない実験計画を進めており、研究代表者所属機関の倫理委員会の承認を得ている状態である。 以上のことから、「やや遅れている」という進捗状況として報告する。
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Strategy for Future Research Activity |
我々が以前に開発した臀部ずれ力軽減のための「シートカバーアセンブリ」は、背もたれリクライニング時の臀部ずれ力の増大、変動を軽減させるものである。このシートカバーアセンブリは、ティルト、リクライニング機能併用時にどの程度効果を発揮するのかを検討できていない。したがって、今後はその検討をすることで、シートカバーアセンブリの問題点を挙げ、現在開発中の背もたれの機能に活かしていく。 さらに、試作中の背もたれが完成した際には、安全性の確認の上、車椅子使用高齢者を対象として、その効果の検証を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
試作する新機能を備えた背もたれの完成が遅れているために、その費用を残しているため。2023年度には完成予定であるので、その際に使用する予定である。 加えて、成果発表のための学会出張の旅費、英文校正代として使用する予定である。
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