2022 Fiscal Year Research-status Report
The study on the technological spin-off in the diversification strategy of the sports organization
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22K11487
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
久富 健治 武庫川女子大学, 健康・スポーツ科学部, 教授 (00280090)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | スポーツテクノロジー / スピンオフ / 多角化戦略 / 支配的論理 / メンタルモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は研究テーマに関連する情報収集と途中経過の学会報告という形になった。 実践経営学会第65回全国大会の統一論題シンポジウムおよび研究・情報交換会に参加し、研究・情報交換会において、研究報告テーマに関連する若干の研究者と特許情報の分析手法について情報交換、ディスカッションを行った。特に、次世代自動車の運転技術に関して、開発企業の特許情報分析を行っている研究者とのやり取りは、対象となる産業分野は異なるが研究手法に関して有益な知見を得ることができた。 同じく実践経営学会第65回全国大会の3日目、「スポーツメーカーの成長戦略における事業ドメインおよびビジネス言説の変容について」というテーマで研究報告を行った。これは科研費の研究課題である「スポーツ組織の多角化戦略におけるテクノロジーのスピンオフに関する研究」を遂行・解明する上で不可欠の前提となる、スポーツメーカー(アシックス、美津濃、デサント)の事業ドメインの変容について分析を試みたものである。限られたエビデンスに基づく報告であったが、コメンテーターからは、技術的資源を軸とした事業ドメイン研究に資するものとして前向きな評価を頂くことができた。今回の報告では、市場環境の変化に直面したスポーツメーカーが、蓄積された技術的資源を起点として、新たな顧客層および顧客機能を探索することで事業ドメインを変容させたこと、その過程で技術のスピンオフがなされることを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主要な課題はテクノロジーのスピンオフ事例の収集と類型化であったが、事例の取集にやや手間取った感がある。そこで研究手法の視点をやや変えて、事例の収集と整理を続けながらも、他業種へのスピンオフという意思決定を支える企業の戦略の特徴という、定性的な問題に取り組んだ。 特に限定的な範囲だが、スポーツメーカー(アシックス、美津濃、デサント)の事業ドメインの変容について分析を試みた。市場環境の変化に直面したスポーツメーカーが、蓄積された技術的資源を起点として、新たな顧客層および顧客機能を探索することで事業ドメインを変容させたこと、その過程で技術のスピンオフがなされることを示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はテクノロジーのスピンオフ事例の継続的な収集に努めながら、スピンオフに影響を及ぼす多角化戦略の前提にある経営者のメンタル・モデルの解明に取り組む予定である。 スポーツメーカーの事業ドメインに影響を及ぼすのは経営者のメンタル・モデル(事業観・世界観)については、スポーツとは何か、スポーツにどのような意味を付与するかによって事業ドメインは変化するし、そのことは成長戦略の方向性にも影響を与える。 たとえば、海外の事例であるが、1980年代に米国で女性を中心にエアロビクスブームが起きた時、ジョギング用シューズで成功を収めたナイキは、エアロビクスをスポーツとみなさなかったし、女性差別的な感覚も持っていたことから、横からの衝撃に強いシューズの開発は行わなかった。もっぱら走ることに特化した縦方向の衝撃に強いシューズ開発に強みを持っていたが、エアロビクスの市場は横からの衝撃に強いシューズを開発したリーボックに奪われる結果となった。スポーツに女性は参画すべきでないこと、エアロビクスはスポーツではないという、ジェンダーに関わる価値観、スポーツに込めた意味や定義が商品開発の可能性に影響を与えた事例である。 このように、スポーツにはいろいろな意味や価値観が投影され、スポーツメーカーの技術や製品開発、あるいはターゲット市場の認識や選択の方向性に影響を及ぼすことがある。スポーツメーカーの場合、スポーツや身体活動そのもの、あるいはスポーツ事業に対する解釈や価値観が、戦略構築に影響を及ぼす度合いが強くなりうる。少なくとも関連はしている。こうしたスポーツメーカーの経営者のスポーツ事業に関わるメンタルモデルが成長戦略の構築に及ぼす影響について検討することとしたい。
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Causes of Carryover |
研究用のソフトウェア等の購入はほぼ計画通りであったが、関連文献・書籍の購入計画が遅れたことによる。テクノロジーのスピンオフ現象の特徴をつかむために、スポーツ関連分野以外の他産業にも視野を拡大して関連文献・書籍の渉猟を行う計画である。
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Research Products
(1 results)