2022 Fiscal Year Research-status Report
身体的負荷の推定にもとづく競技用車いすの操作性評価方法の確立
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22K11502
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
田中 克昌 工学院大学, 工学部, 准教授 (90313329)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | スポーツ工学 / 逆動力学解析 / 筋骨格モデル / 障がい者スポーツ / 競技用車いす |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,筋骨格モデルを用いて競技用車いすの漕ぎ動作を再現する逆動力学解析モデルを構築して,車いすの操作時における生体内力を推定するとともに,推定された生体内力と車いす構造を決定する設計パラメータとの関係を調査することにより,車いすの操作性に対して身体的負荷を考慮した評価方法を確立することを目的としている.このうち,本年度は,モーションキャプチャシステムを用いた車いすの漕ぎ動作の計測をもとに筋骨格解析モデルを構築することを中心に研究を進めた. まず,モーションキャプチャシステムを用いて,車いすを漕いだ際の身体の三次元動作と車いすの挙動を計測した.同時に,漕ぎ動作中における車いすの車軸まわりのトルクを計測した. 次に,車いすの漕ぎ動作を再現する筋骨格解析モデルを構築した.身体モデルは,筋骨格モデリングシステム「AnyBody Modeling System」を用いて,被験者の身長や体重のほかに身体機能を考慮して構築した.身体機能の低下は,その低下を表現する筋部位に対して,健常者が発揮できる筋力を低下させることによって表現した.また,車いすモデルは,計測に用いた車いすの主要な諸元である車輪径,キャンバー角,車軸位置を実測をもとに設定することにより,剛体として表現した. そして,漕ぎ動作は,車いすモデルに対して身体モデルを動作計測時と同様の姿勢で着座させ,身体モデルに対して動作計測より得られた各関節角度の時刻歴を入力することにより表現した.また,解析モデルの精度を検証するために,シミュレーションにおいて手と車輪との間に生じている接線力を用いて算出したトルクの解析結果と,動作計測時に取得したトルクの計測結果を比較した.その上で,解析モデルの精度を確認し,精度を向上させるためにモデルの改良を試みた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の当初計画を,車いすの漕ぎ動作計測にもとづいて筋骨格解析モデルを構築することとしていた.解析モデルの構築にあたっては,三次元動作に加えてトルクの計測も実施できたことによって,力学的なデータも用いて構築した解析モデルの精度を検証することができた.現時点における解析モデルの精度には,一部改善の余地を残しているものの,当初計画をおおむね達成できている状況にあると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,構築した筋骨格解析モデルを用いて車いすの設計パラメータを変化させたシミュレーションを実施することにより,推定された筋発揮や関節トルクから設計パラメータが生体内力に及ぼす影響を調査するとともに,車いすの操作性の評価につながると想定される新たな指標を提案することを試みる. まず,現時点における解析モデルの精度に改善の余地を残していることから,主に身体モデルと車いすモデルの拘束に関する設定を見直すことにより,モデルの精度を改良する.その上で,シミュレーションから身体各部位における筋発揮や関節トルクを算出する.これらのうち,時間変化の傾向や発揮の値が大きい部位に着目したり,また車いすの設計パラメータを変化させたシミュレーションから生体内力に影響が出やすい部位を特定したりすることにより,漕ぎ動作を評価する上で着目する部位を特定する. 次に,操作性の評価につながる指標の提案を試みる.具体的には,可操作力楕円体を活用した指標を想定している.これは,ロボットアームにおいて手先の可操作性の考え方を活用したものであり,漕ぎ動作時の手先の軌跡である楕円体と,手先から車輪に作用する力の大きさと方向によって,上肢が車輪に対して大きな力を伝達しやすい状態にあるかを考えるものである.そして,このような指標と身体各部位の筋発揮や関節トルクとの関係を調査することにより,提案した指標の有効性を検証していく.
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Causes of Carryover |
本年度に導入した,筋骨格解析ソフトウェアのライセンス使用料が,今後値上げされる予定にある.研究期間中,この使用を維持するために必要となる予算を,翌年度および翌々年度まで確保できるようにするために,翌年度以降における当初の交付額を踏まえて,本年度の使用計画を変更している. 翌年度以降は,当初の計画にある使用額に加えて,ライセンス使用料の増額を見込んで使用していく予定である.
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