2022 Fiscal Year Research-status Report
歩行における足先位置の制御と体幹の揺動抑制に関与する筋シナジーの協調構造
Project/Area Number |
22K11694
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Research Institution | Yamaguchi Junior College |
Principal Investigator |
日置 智子 山口短期大学, その他部局等, 准教授 (30390272)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 関節間シナジー / 歩行解析 / 脚制御戦略 / 協調構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの歩行を観察すると一歩ごとに脚の関節軌道にばらつきがみられるが, 歩行の一周期におけるある時期には, ある関節角度のばらつきを他の関節が補うという協調的な働き(関節間シナジー)によって足先の高さのばらつきが抑えられていることが報告されている。また, 歩行に関与する脚の筋群は協調的に活動し, 体幹の前後・左右方向の揺動を抑えることで歩行の安定化に寄与していることが示唆されている。 本研究の目的は, (1)足先の高さと前後・左右の位置および股関節位置のばらつきを抑える関節間シナジーが歩行中にどのように働いているのか, (2)足先位置のばらつきを抑える関節間シナジーの形成に寄与する筋活動が, 股関節位置のばらつきを抑える(体幹の揺動を抑える)関節間シナジーの形成に寄与する筋活動とどのように共存しているのかを解明することである。 今年度は, 前述(1)の解明の足がかりとするため, 昨年度までに既に実施している歩行計測実験で得られた運動軌道データを確認し,着地時に側面接地ではなく踵接地をしている被験者データの抽出を行った。そして, UCM解析 (Uncontrolled Manifold analysis)とCR(Covariation analysis by Randomization)解析により関節間シナジーの解析を実施している。特に, 関節間シナジーが歩行速度に応じてどのように異なるのかを検証するため, 異なる歩行速度(3.0, 4.5, 6.0km/h)における関節軌道データを用いて解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は昨年度までに既に実施している歩行計測実験で得られた運動軌道データを用いて, UCM解析とCR解析を行なった。当初は少なくとも10名分の運動軌道データの解析を行う予定であったが, 被験者によって異なる歩き方をしていることが明らかとなり, その確認作業に時間がかかったため解析が遅れ, また, 追加の計測実験も必要となったため, 「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
関節間シナジーの解析に必要となる十分な被験者データを確保するため, 追加の計測実験を行う。 得られた脚関節軌道データに対してUCM解析とCR解析を行い, 歩行の一周期における各瞬間に足先位置のばらつきを抑えるような関節間の協調構造(関節間シナジー)と股関節位置のばらつきを抑える(すなわち体幹の揺動を抑える)ような関節間シナジーがどのように存在するかを確認する。
同時に, 筋電の計測を行い, 歩行に関与する筋活動基底(筋シナジー)を推定する。推定した筋シナジーの協調構造と歩行中の足先位置のばらつきの抑制に対する効果を解析することで, 足先位置のばらつきを抑制する関節間シナジーの形成に寄与している筋シナジーを抽出する。また、足部に対する股関節位置 (前後,左右) のばらつきを抑える関節間シナジーの形成に寄与している筋シナジーも抽出する。これら2つの筋シナジーを比較することで, 歩行の安定化のための「体幹の左右方向の揺動の抑制」に寄与する筋シナジーが, 推進のための「股関節に対する足先位置の矢状面内の軌道のばらつきを抑える」関節間シナジーの形成にいかに寄与しているかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
前年度までの計測実験で得たデータの見直しと追加計測が必要となるデータの確認にやや時間を要し, 当初予定していた計測機器の購入を次年度に先送りしたため, 未使用額が発生した。 また, 予定した実験データを取得できなかったことにより, 研究成果の報告ができなかった。 未使用額は次年度分と合わせ, 新たに必要となった計測機器及び解析用PCの購入, 学会参加費等に使用する予定である。
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