2022 Fiscal Year Research-status Report
心臓アンチエイジング薬の開発を目指したヒトiPS細胞由来老化心筋モデルの構築
Project/Area Number |
22K11733
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
日高 京子 北九州市立大学, 基盤教育センター, 教授 (00216681)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 みずき 九州大学, 医学研究院, 助教 (70380524)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 老化 / 幹細胞 / 心臓 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞の老化は、持続的なDNA損傷応答によって進行し、不可逆的な細胞周期の停止や炎症性サイトカインなど のSASPの発現を伴い、組織や個体の老化の原因となっているが、分裂終了細胞である心筋の細胞レベルの老化についてはまだ不明な部分も多い。本研究は、ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いた老化心筋細胞in vitroモデル系を構築し、心筋細胞の老化機構を明らかにするとともに、老化細胞除去による心臓のアンチエイジング薬の開発をめざすものである。
初年度は、(1)ヒトiPS細胞を心筋細胞に分化誘導させ、外的な酸化ストレスとして、過酸化水素水処理による老化誘導を試みた。また、(2)外的な酸化ストレスのみならず、内的な酸化ストレス負荷による老化誘導の可能性を模索するため、誘導的にROSを細胞内に産生させるiPS細胞を構築した。一方で、(3)老化心筋細胞の特徴を捉えるため、近年のシングルセルレベルの文献およびデータベースを探索し調査を進めた。心筋細胞の一塩基変異(SNV)は年齢とともに蓄積され、加齢に伴う心筋SNVは、酸化的損傷の特徴であるC>A変異を有していることが報告された(Choudhyry 2022)。加齢に伴う心筋細胞の変異の蓄積は、加齢が心機能障害に及ぼす影響を理解するための有用な情報となり、早期老化誘導によるモデル系の開発には、酸化DNA損傷を修復できない変異体をうまく活用することが考えられた。そこで、DNA修復欠損マウスのNGSデータを用いて、体細胞および生殖細胞に生ずるゲノム変異を効率よく検出する解析のためのパイプラインを構築したところである。また、(4)シングルセルRNA-seqのデータが公共データベース上で利用可能となってきているため、これを活用したデータ解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
加齢に伴う心房細動が問題となっていることから、当初はヒトiPS細胞から心房筋細胞に分化させようと試みたが、心筋分化誘導がまだ十分に最適化されておらず、老化誘導実験に十分な純度の細胞を得ることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
心房筋細胞に限定せず、まずは心筋細胞を効率よく分化させる条件を見つけ、外的ストレスによる老化誘導の最適化を進めていく一方で、内的ストレスを誘導的に産生するiPS細胞を改良していく予定である。
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Causes of Carryover |
初年度は分化誘導実験が思ったように進まず、バイオインフォマティクス解析が中心となった。次年度は細胞構築を含めた実験を計画しており、当初の予定通り進めていきたい。
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