2023 Fiscal Year Research-status Report
魚類由来エラスチンペプチドの血管保護作用を介した生活習慣病抑制効果
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22K11791
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
竹森 久美子 近畿大学, 農学部, 教授 (00288888)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増田 誠司 近畿大学, 農学部, 教授 (20260614)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | エラスチンペプチド / 高血圧性腎血管障害 / DPP-Ⅳ阻害作用 / SHRSP / 抗炎症作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
DPP-IV阻害剤はインスリン分泌を亢進し血糖調節する薬剤として知られているが、高血圧性腎障害の抑制作用も報告されている。先行研究でカツオ動脈球由来エラスチンペプチド(EP)は高血圧性血管障害発症抑制効果を示したことから、本研究では脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP)にEPを投与しDPP-Ⅳ阻害を介した高血圧性腎障害抑制効果について検討した。はじめにEPのDPP-Ⅳ阻害活性を検証したところEPはDPP-Ⅳ阻害率を有することが明らかになった。現在より正確な阻害活性測定の条件設定を試みている。そこで、高血圧と耐糖能異常を併発するSHRSPに対し糖負荷試験を実施したところ、グルコースのみ負荷したものに対してEPを溶解したグルコースを負荷した個体では15分の血漿GLP-1濃度と血漿インスリン濃度は有意に上昇し、さらに、30分、60分時に血糖値は有意に低値を示した。このことからEPがDPP-IV阻害活性を有し、且つ予備試験ではあるがEPの分解産物が血中に移行することをLC-MSによる測定で確認できたことから、SHRSPにEPを4週間経口で継続投与したときの影響を検討した。EPを継続投与したSHRSPでは腎硬化症を発症した個体数は少なく、腎血管壊死数は有意に低値を示した。さらに糸球体画分の中に存在する血管内皮細胞上に発現するDPP-Ⅳ、ICAM-1(接着分子)、AT1R(アンジオテンシン受容体 Type 1)、ならびに白血球の表面に発現するはDPP-Ⅳ、Mac-1(接着分子)、AT1R、iNOS(誘導型NO産生酵素)の発現が有意に低値を示した。以上の結果からEPがDPP-Ⅳの発現と活性を阻害し、レニンーアンジオテンシン系を抑制することにより高血圧性腎障害を抑制する機能性を発揮することが出来る食品由来ペプチドであることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度用いた高血圧モデル動物であるSHRSPならびにその元系統であるWistar kyoto ratへのEP投与試験の結果から、EPは血糖上昇抑制ならびにインスリン分泌促進作用を有することが確認された。この作用が、DPP-Ⅳ阻害活性によるものと想定し、引き続き検証している。昨年度から体内の消化を想定した人工消化試験を試みているが、適切な人工消化の条件設定の確立に向けて、基質と酵素の割合の設定にやや遅れが生じている。エラスチンペプチドは、DPP-Ⅳ阻害活性の他にGLP-1作動作用を持つ可能性も考えられる。そこで次年度は、今年度の予備試験でエラスチンペプチド経口投与後に血中に移行・同定されたジ及びトリぺプチドのDPP-Ⅳ阻害作用とGLP-1作動作用の両方について並行で検証していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
生後20 週齢で重症高血圧を発症したSHRSPを12 時間絶食させた後、エラスチンペプチドを(1 g/kg)経口投与する。採血時間5分前にイソフルランおよびソムノペンチル併用麻酔した後に開腹し、門脈血(抗凝固剤は5% EDTA/0.9% NaCl)を採取する。得られた血漿に3倍量のエタノールを添加し遠心分離してサンプルを得る。採血時間は、EP投与前、投与後0、15、30、60、120、240 分を予定している。サンプルは、LC-MSを用いてエラスチンペプチドが消化・吸収を受け血中移行したペプチドの組成・配列を明らかする。続いて抗炎症、抗糖尿病作用に寄与する合成ペプチドを作成し、浸透圧ミニポンプを用いてラット静脈内持続投与し、血管保護作用を検証する。
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Causes of Carryover |
本年度の研究費残額は27,164円であり、遂行された研究活動において順調に使用することができたと判断される。当該研究は来年度も継続して行うことになっている研究課題であり,今後実施される研究ならびに論文作成の費用として、本年度の残額を有効に使用することができる見通しである。
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