2023 Fiscal Year Research-status Report
赤ワインによるTRPチャネルを介した血小板機能抑制の新しい分子メカニズム
Project/Area Number |
22K11841
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
丸茂 幹雄 兵庫医科大学, 医学部, 主任教授 (40333950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 一郎 兵庫医科大学, 医学部, 特別招聘教授 (70220829)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 血小板 / 血栓症 / 容量依存性カルシウム流入 / TRPチャネル / ポリフェノール |
Outline of Annual Research Achievements |
赤ワイン消費量が多いフランスにて脂肪摂取量が多いにもかかわらず虚血性心疾患の死亡率が低いという、いわゆるフレンチパラドックスが報告されて以来、赤ワインの抗血栓効果について注目が集まっている。赤ワインにはプロアントシアニジン、アントシアニンやタンニンなどのフラボノイドのみならず、ポリフェノールとして抗酸化作用を有するレスベラトロールが含まれており、これらの抗酸化物質が及ぼす血小板機能抑制が抗血栓的に働いていることが推察されている。フランス人を対象に調査された研究では、ワイン飲用者の血小板におけるADP及びコラーゲン凝集は非飲用者と比べて弱かったと報告されており、このようなレスベラトロールによる血小板機能抑制を介した抗血栓作用は数多く報告されている。一方でアルコールの作用として、疫学研究では適正量の飲酒習慣により虚血性心疾患発症率が低くなることが報告され、レスベラトロールのみならずアルコールそのものも抗血栓作用を有することが示された。本研究では、血小板凝集能に対するレスベラトロールとエタノールの同時投与による効果を明らかにするとともに、両者による血小板活性化経路における作用点を検討した。 健常人の血液から洗浄血小板浮遊液を作成し、レスベラトロール (3.125 μM) およびエタノール (0.5%) 存在下での血小板内Ca2+濃度 ([Ca2+]i)、血小板凝集能およびトロンボキサンB2 (TXB2) 濃度を、それぞれ蛍光光度法、比濁法、ELISAを用いて測定した。また、全血検体を用いた血小板凝集能をScreen Filtration Pressure (SFP) 法により測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トロンビン惹起血小板凝集は6.25 μM以上のレスベラトロールおよび0.5%以上のエタノールでそれぞれ濃度依存的に抑制された。トロンビン、コラーゲンよびアラキドン酸 (AA)刺激による血小板凝集において、レスベラトロールおよびエタノールの同時投与によってエタノールの血小板凝集抑制作用が増強された。Ca2+非存在下でのAA惹起血小板凝集では、レスベラトロールとエタノールの単独および同時投与のいずれによっても抑制効果は認められなかった。 トロンビン刺激血小板において、単独では血小板凝集を抑制しない低濃度のレスベラトロールがエタノールの血小板凝集抑制作用を増強する一方、レスベラトロールおよびエタノールにより [Ca2+]iは影響を受けなかった。また、血小板外Ca2+非存在下では、AA刺激による血小板凝集はレスベラトロールおよびエタノールによる影響を受けなかった。以上の結果から、レスベラトロールとエタノールによる血小板凝集抑制は [Ca2+]i上昇への作用を介さず、血小板内収縮蛋白のCa2+感受性低下を介する可能性が示唆された。さらにAA刺激時のTXB2生成がレスベラトロールおよびエタノールの同時投与によって抑制されたことから、レスベラトロールおよびエタノールの相乗的な血小板凝集抑制効果はcyclooxygenase-1 (COX-1) 活性の低下を介する可能性が示唆された。 細胞内酸化ストレス環境を惹起させる条件でレスベラトロールの抗酸化作用が血小板凝集に及ぼす影響を検討した。細胞内酸化物質の一つであるインドキシル硫酸の投与は血小板凝集を亢進させた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の研究にて、レスベラトロールおよびエタノールに相乗的な血小板凝集抑制効果が認められる事、それらの作用はCOX-1活性の低下を介する可能性を示した。しかしながら、このレスベラトロールの血小板凝集抑制効果が抗酸化作用を介したものであるかはいまだ不明のままである。そこで2024年度も引き続き我々は細胞内酸化ストレス環境を惹起させる条件でレスベラトロールの抗酸化作用が血小板凝集に及ぼす影響を検討する。血小板凝集に関しては従来の比濁法を用いるほか、全血検体を用いたScreen Filtration Pressure (SFP)法により血小板凝集能を測定し、またずり応力血小板凝集惹起の効果を検証するために血流下血栓形成能解析システム (total thrombus-formation analysis system: T-TAS)での測定も検討する。
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Causes of Carryover |
昨年度の実験計画で予定していた血流下血栓形成能解析システム (total thrombus-formation analysis system: T-TAS)での血小板凝集測定を次年度に先送りし たため、その測定機器レンタルに係る費用を2023年度に請求する計画に変更したので、使用額に変更が生じた。
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Research Products
(1 results)