2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of citrus-based prophylactic and antidepressant agents that act on peripheral tissues
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22K11843
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Research Institution | Nagasaki International University |
Principal Investigator |
中島 健輔 長崎国際大学, 薬学部, 助教 (90762162)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | うつ病 / BDNF / 末梢組織 / カンキツ |
Outline of Annual Research Achievements |
神経細胞の新生・成長を担う脳由来神経栄養因子(BDNF)の脳内における減少は、うつ病の発症につながる。BDNFは脳由来という名称ながら腎臓などの末梢組織でも産生され脳へと移行する。そのため、末梢組織においてBDNFの産生を促進する物質は、脳内BDNF量の増加をもたらし、うつ病予防・改善効果を示すと考えられる。この考えに基づき本研究では、研究代表者がBDNF産生能を報告したヒト腎がん細胞ACHNを用いてBDNF産生促進作用を有するカンキツ成分を見出し、その産生促進機序ならびにラットにおけるうつ病予防・改善効果を明らかにすることを目的とした。 2023年度は、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構および鹿児島大学などから入手した様々なカンキツ品種のACHN細胞におけるBDNF産生促進効果の検討を行い、ダイダイ区・ミカン区に属するカンキツ品種ならびにそれらの交雑種の果皮、可食部および摘果果実が高い効果を示すことを見出した。また、それらの効果の一部にカンキツに含有されるフラボノイドであるノビレチンが関与している可能性を明らかにした。続いて、ダイダイ区およびミカン区カンキツのBDNF産生促進機序の検討を実施し、タンカンなど数種のカンキツ品種がcAMP response element binding protein(CREB)リン酸化により、BDNF遺伝子の発現を増加させることを見出した。さらに、ダイダイ・ナツミカンの未熟果実を基原とする生薬であるキジツを含有する四逆散の経口投与がストレス負荷によるラット血中BDNF濃度の低下を抑制することを明らかにした。 上記の成果の一部は、J. Pharm. Health Care Sci.およびJ. Nutr. Sci. Vitaminol.の2報の学術雑誌に掲載された。また、7件の学会発表を行い、そのうち2件は優秀発表賞を受賞している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダイダイ区、ミカン区、さらにはそれらの交雑種カンキツの果皮、可食部および摘果果実のACHN細胞における高いBDNF産生促進効果を見出し、その関与成分ならびに促進機序の一端を明らかとした。これらの成果は2報の学術雑誌に掲載された。また、カンキツを基原とする生薬を含有する四逆散の経口投与がin vivoにおいても効果を示すことを明らかとした。2023年度に見出した多くのカンキツ品種のACHN細胞におけるBDNF産生促進効果は四逆散のそれと比べ高いものであったため、今後の成果が期待される。上述の進捗状況から、本研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討では、ACHN細胞のBDNF産生を1.4倍ほど促進した物質はいずれもラット血中BDNF濃度を上昇させていた(Nakajima et al. Biomed. Res. 2023、他)。2023年度に実施したスクリーニングにより、ACHN細胞において1.4倍を超える効果を示す多くのカンキツ品種が明らかとなった。今後はそれらのカンキツ品種から活性成分を単離・同定し、そのBDNF産生促進機序ならびにラットにおけるうつ病予防・改善効果を検討することで、末梢組織を作用点とする新規抗うつ薬シーズの発見を目指す。
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Causes of Carryover |
細胞培養用のプラスチック機器の譲受により、購入の必要がなくなったため差額が生じた。差額は、研究試薬の価格上昇による支出の増大に充当する予定である。
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