2023 Fiscal Year Research-status Report
小児外科疾患における周術期プロバイオティクス投与による術後合併症予防効果の検討
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22K11861
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
越智 崇徳 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (70794147)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 胆道閉鎖症 / 肝移植 / 腸内細菌 / 胆汁酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、小児外科疾患の周術期において、プロバイオティクス投与による腸内環境の改善が術後合併症を低減し得るという仮説の検証を目的としている。 胆道閉鎖症に対する葛西手術においては、周術期は手術の侵襲に加えて、高容量かつ長期に及ぶステロイド投与や抗菌薬投与など、腸内細菌叢に悪影響を与える因子が多く存在する。一旦減黄が得られた症例においても、胆汁鬱滞の再燃や胆管炎、門脈圧亢進症に伴う脾腫や胃食道静脈瘤など、長期的な経過観察および加療を要する。また、胆汁鬱滞が増悪し、肝硬変に至るような症例では肝移植が行われる。肝移植においても、周術期にはステロイドや抗菌薬投与が行われ、さらには永続的に免疫抑制剤の投与が必要となる。 プロバイオティクス投与による介入研究を行う前段階として、胆道閉鎖症の自己肝生存症例、移植肝生存症例、健常者の糞便を採取し、腸内細菌叢および糞便有機酸濃度の解析を行った。自己肝生存症例、移植肝生存症例のいずれにおいても、健常者に比べて、総菌数および偏性嫌気性菌 (Bacteroides fragilis group, Bifidobacteriumなど) の低下を認め、病原性のあるClostridioides difficile, Enterobacteriaceae, Enterococcusの増加を認めた。また、移植肝生存症例では、血液生化学検査で肝・胆道系酵素がいずれも正常値であったにも関わらず、菌叢の乱れ (dysbiosis) を認めており、葛西手術や肝移植の周術期の侵襲 (手術、ステロイド・免疫抑制剤・抗菌薬投与) がその後のdysbiosisの継続に影響していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胆道閉鎖症における葛西術後自己肝生存症例と術後移植肝生存症例の糞便解析において、いずれの群においても健常者に比べてdysbiosisを生じているという興味深い結果を得た。そのため、次に胆汁酸にfocusを当て、それぞれの対象群における血清および便中胆汁酸濃度の解析を行い、腸内細菌叢と胆汁酸との関連について検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
胆道閉鎖症葛西術後自己肝生存および移植肝生存症例の血清および便中胆汁酸濃度の解析を進め、それぞれの群における腸内細菌叢と胆汁酸の関連性を明らかにする。さらには、それぞれの群におけるdysbiosisや胆汁酸濃度の異常が、プロバイオティクス内服によって是正されるかについても今後検証する。
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Causes of Carryover |
プロバイオティクス投与による介入が開始されていないこともあり、本年度の使用額が予想よりも下回った。プロバイオティクス投与研究が開始できれば、その購入費用と解析費用に当てる。また、次年度は、これまでの研究成果を英文論文として投稿予定である。
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[Book] 特集【胆道閉鎖症の研究update】腸内細菌叢の包括的解析2024
Author(s)
越智 崇徳, 武田 昌寛, 朝原 崇, 栗田 晃伸, 緒方 謙, 鈴木 光幸, 入戸野 博, 齋浦 明夫, 水田 耕一, 笠原 群生, 岡崎 任晴, 山高 篤行, 山城 雄一郎
Total Pages
4
Publisher
東京医学社