2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of Algorithms for Ultrametric Tree Optimization and Hierarchical Clustering Optimization
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22K11921
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
安藤 和敏 静岡大学, 工学部, 教授 (00312819)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 組合せ最適化 / クラスタリング / 系統樹 / デンドログラム / 超距離 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画調書に記載した3つの研究計画のうち,「(1)最良近似超距離木問題に対する局所探索アルゴリズムの開発」及び「(2)階層クラスタリング最適化問題に対する局所探索アルゴリズムの開発」に関連する研究を行った. 超距離木とは生物の進化の歴史を表現する基本的なモデルである.(1)の最良近似超距離木問題とは,相違行列と呼ばれる分析の対象となる生物種の相違を表わす行列Mが与えられたときにMに最も適合する超距離木を見出す問題である.本年度は適合度の指標がl1-ノルムのときのこの問題に対するkSS操作(k制限部分木交換操作)と呼ばれる2分木の変形操作に基づく局所探索アルゴリズムを開発した.また,このアルゴリズムの1反復あたりの計算時間が O(min{2^{k+1}, n} n^3 loglog n) であることを示した.ここで,n は入力の相違行列の次数である. 階層クラスタリング最適化問題の入力は類似行列と呼ばれる分析対象のデータの類似度を表す行列Sであり,その出力はデータ集合の分割の階層構造を表すクラスター木(あるいは,デンドログラム)である. 階層クラスタリング最適化問題は適切な目的関数(許容目的関数)を最小化するクラスター木を求める問題である.この問題はNP困難であるが,2022年に研究代表者を含むグループは目的関数がDasguptaの目的関数の場合にkSS操作に基づく1反復あたりの計算時間が O(n min{2^{k+1},n}k)である局所探索アルゴリズムを提案した.本年度はk3SP操作(k制限部分木置換操作)と呼ばれるkSS操作を一般化する2分木の変形操作を導入し,この操作に基づく局所探索アルゴリズムを開発した.また,このアルゴリズムの1反復あたりの計算時間は O(n min{2^{k+1},n}k) であることを示した.ここで,n は入力の類似行列の次数である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【研究実績の概要】に記載した通り,2023年度は本研究課題の研究計画「(1)最良近似超距離木問題に対する局所探索アルゴリズムの開発」及び「(2)階層クラスタリング最適化問題に対する局所探索アルゴリズムの開発」に関連する2つの研究を行い,国内の学会においてその研究成果を公表した.また成果の公表までには至らなかったが,研究計画(2)に関連する別の研究でも進展が見られた.このように2023年度は本研究課題の複数の部分課題において新たな進展が得られた.一方で昨年度研究代表者は管理職に任命され,所属部局での管理運営業務が著しく増加した.そのため前年度までの研究成果を論文としてまとめる作業が大幅に停滞している.こうしたことから現在までの進捗状況を「やや遅れている」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに本研究課題の3つの研究計画「(1)最良近似超距離木問題に対する局所探索アルゴリズムの開発」,「(2)階層クラスタリング最適化問題に対する局所探索アルゴリズムの開発」及び「(3)重複階層クラスタリング最適化問題に対する局所探索アルゴリズムの開発」のうち,(1)と(2)についてはいくつかの研究成果が得られ,既に国内の学会でその成果の発表を行っている.2024年度以降ではこれらの研究成果を国際会議において発表し,さらには英語論文としてまとめた上で国際的な学術雑誌に投稿する予定である. 研究計画(1)に関連する研究で今後の推進方策としては,適合度の指標がl2-ノルムのときの最良近似超距離木問題の局所探索アルゴリズムの開発がある.昨年度はl1-ノルムのときの最良近似超距離木問題に対するkSS操作に基づく局所探索アルゴリズムを開発した.このアルゴリズムのさらなる高速化及びkSS操作とは異なる2分木の変形操作に基づく局所探索アルゴリズムの開発は今後の課題である. 研究計画(2)については,これまでに提案されている許容目的関数のクラスとは異なる許容目的関数のクラスを考察しその特徴付けを与えるとともに,最適化のための局所探索アルゴリズムを開発することを目的とする. 研究計画(3)についてはまだその研究に着手していない段階であるが,2024年度から検討を始める予定である.
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Causes of Carryover |
【現在までの進捗状況】に記載した通り昨年度における研究代表者の所属部局における管理運営業務の著しい増加のため,昨年度は本研究課題の遂行のために十分な時間を確保できなかった.特に,一昨年度までに得られていた研究成果を国際会議と学術雑誌に公表する作業に大きな遅れが生じている.そのため,2023年度に予定していた国際会議において研究成果を発表するための海外出張のために旅費が使用されなかった.これが次年度使用額が生じた理由である.この次年度使用額は主に国際会議における研究成果発表のための旅費に使用する予定である.
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