2023 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of Cooperative Behavior and Incentive Mechanisms in Internet Security Measures
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22K11999
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
石橋 圭介 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (20710271)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 社会ジレンマ / 限定合理性 / 互恵性 / ネットワークセキュリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
インターネットセキュリティ対策技術普及に関する社会的ジレンマについて、今年度は対策技術として現在普及が進みつつある経路ハイジャックを防ぐRPKI (Resource Public Key Infrastructure) を選定し、社会ジレンマ状況及びジレンマ解消の可能性を分析した。インターネット接続構造を模擬した小規模のネットワーク(100運用主体)上でネットワーク運用主体をエージェントとしたマルチエージェントシミュレーション環境を構築した。本シミュレーション環境では、RPKI導入には一定のコストが発生し、一方その便益であるセキュリティリスク軽減度(ハイジャック被害リスク軽減度)は自エージェントのみならず他エージェントのRPKI導入状況にも依存する。まずエージェントが自身のRPKI導入コストと導入時のセキュリティリスク軽減度合いのみを考慮する合理的な行動を取った場合はセキュリティ技術が普及しない社会ジレンマ状態に陥ることを確認した。一方、エージェントが、他エージェントのセキュリティリスク軽減も考慮に入れる互恵性や、コストとリスク軽減度合いの考慮に不確実性がある限定合理性など、行動経済学で知られている特性にも従って行動する場合には、現在の普及進展状況と同じく、時間発展と共に、ある程度RPKI導入が進み、社会ジレンマが部分的に解消することを確認した。 上記内容を国内研究会招待講演1件、国内研究会1件として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、インターネットセキュリティ技術導入における社会ジレンマ状態の解明およびジレンマ解消の可能性について、小規模環境ながらマルチエージェントシミュレーションによる互恵性および限定合理性に基づく普及可能性を確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は社会ジレンマ解消の可能性要因として互恵性や限定合理性を確認したが、来年度以降は他の要因の可能性も検討する。 また、それら要因の度合いによるセキュリティ技術普及状況の変化を分析し、実際の普及状況から、各運用主体の要因度合いを推定していく。本検討において必要に応じ検証環境をより実際のインターネット規模に合わせる大規模化も検討する。 その他、RPKI以外のセキュリティ技術、例えば電子メールに関するDMARK等についても対象を拡張していく。
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Causes of Carryover |
当初予定していた大規模シミュレーション実施用の計算機購入について、シミュレーション環境構築の遅れにより、購入も次年度以降に延期するため。
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