2022 Fiscal Year Research-status Report
機能性顔料の開発(セラミックス製品の真正性と偽造困難性の更なる向上)
Project/Area Number |
22K12033
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
藤川 真樹 工学院大学, 情報学部(情報工学部), 教授 (20594716)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 人工物メトリクス / 希土類酸化物 / セラミックス製品 |
Outline of Annual Research Achievements |
目標とする白色顔料は、光励起により可視光(2つのピーク波長)と近赤外線(1つのピーク波長)を発光する。この発光は2つの希土類酸化物(酸化エルビウム、酸化イッテルビウム)によってもたらされるが、当該発光を顕著なものにするためには、白色顔料の母体となる材料を探索する必要がある。当該材料の要件は、白色であること、融点が1300度よりも高いこと、2つの希土類酸化物から出る2種類のイオンを取り込める性質を持つこと、である。 母体材料の候補として、ケイ酸ジルコニウム、酸化イットリウム、ケイ酸イットリウムの3つを挙げた。これらは、上記2つの要件(白色であること、融点が1300度よりも高いこと)を満たすためである。それぞれの候補に、2つの希土類酸化物を共添加して1400度で焼成したところ、白色が保たれることが確認された。 つぎに、それぞれの候補に対して励起光(980ナノメートル)を照射しながら、発光の有無(発光が観測された場合には、その強度)を観測した。その結果、他の2つの候補に比べて、酸化イットリウムが母体であるときに、強い発光が観測された。また、可視光と近赤外線の発光も確認できたことから、酸化イットリウムを白色顔料の母体とすることにした。なお、上記焼成時には、反応促進剤として酸化ホウ素を少量添加した。 白色顔料の母体が見つかったことは、本研究において大きな前進である。次年度は、酸化イットリウムと共添加する2種類の希土類酸化物について、その適切な割合を探索することを目標とする。要は、発光強度が最も高く、酸化エルビウムによる着色を可能な限り少なくできる割合を見つけ出すことである。発光強度は分光測定により、着色の度合いは目視により、それぞれ評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
白色顔料の母体となる材料(白色であること、高温焼成を経ても白色を維持できること、2つの希土類酸化物から出る2種類のイオンを担持できること)を見つけ出すことができたことが主な理由である。 当初は、ケイ酸ジルコニウムを主原料とする市販の白色顔料に対して、2つの希土類酸化物を共添加して焼成するアプローチをとったが、強い発光が得られなかった。このため、市販の白色顔料の主原料に着目し、当該原料に対して2つの希土類酸化物を共添加して焼成するアプローチをとった。これが奏功し、現段階でベストと考えられる材料として酸化イットリウムに到達することができた。 当初の方法からの方針転換は、本研究について助言いただいている研究協力者とのディスカッションによるものである。今後も、継続してディスカッションを行い、研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、酸化イットリウムと共添加する2種類の希土類酸化物について、その適切な割合を探索することを目標とする。要は、発光強度が最も高く、酸化エルビウムによる着色を可能な限り少なくできる割合を見つけ出すことである。発光強度は分光測定により、着色の度合いは目視により、それぞれ評価する。 着色の度合いによる評価は、つぎのようにして行う:(1)酸化エルビウムを含む白色顔料と、そうでない白色顔料を作製する。(2)前者の顔料を透明釉薬に混ぜて素焼き生地に塗布したものと、後者の顔料を透明釉薬に混ぜて素焼き生地に塗布したものを用意する。(3)高温焼成により顔料を釉薬層に固着させる。(4)前者の顔料を含む製品と、後者の顔料を含む製品とを目視で比較させ、正しく分類(識別)できるか否かを被験者に問う。
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