2023 Fiscal Year Research-status Report
機能性顔料の開発(セラミックス製品の真正性と偽造困難性の更なる向上)
Project/Area Number |
22K12033
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
藤川 真樹 工学院大学, 情報学部(情報工学部), 教授 (20594716)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 人工物メトリクス / 希土類酸化物 / セラミックス製品 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度の研究成果として、光励起により可視光と近赤外線を発光する白色顔料の開発に成功したことから、2023年度は、当該顔料を陶磁器に添加することを想定した実験を実施した。具体的には2つの実験項目から成る。1つは、白色顔料と液体透明釉薬の混合物を素焼きタイルに塗布し、焼成することで形成される釉薬層について、当該層上の観測点から得られる特徴情報(可視光画像と近赤外線画像)の類似度を算出し、特徴情報としてのユニーク性の度合いを検証するものである。もう1つは、白色顔料の組成には希土類酸化物として酸化エルビウムが含まれるため、開発した白色顔料は淡いピンク色を呈するが、当該色がどの程度肉眼で視認できるのかを検証するものである。 1つ目の実験項目については、はじめに釉薬層上に500か所の観測点を設定し、そこから可視光画像と近赤外線画像をそれぞれ500枚撮影した。次に、位相限定相関法を用いてそれぞれの画像について類似度を算出した。その結果、可視光画像の場合、類似度の平均は0.0114(標準偏差0.0034)、近赤外線画像の場合、類似度の平均は0.5164(標準偏差0.0288)となった。このことから、可視光画像の方が近赤外線画像よりもユニーク性が高いことが分かった。 2つ目の実験項目については、はじめに酸化エルビウムを含む白色顔料とそうでない白色顔料の2つを作製した。つぎに、前者の白色顔料を含む液体透明釉薬と、後者の白色顔料を含む液体透明釉薬を作製し、焼成によって各5枚ずつ、合計10枚の素焼きタイル上に釉薬層を形成した。その後、被験者50名に対してランダムに2枚のタイルを提示し、(1)2枚とも酸化エルビウムを含む、(2)いずれか片方が酸化エルビウムを含む、(3)2枚とも酸化エルビウムを含まない、のいずれかを回答させる実験を実施した。その結果、平均正答率は45.4%となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に掲げた2年目の研究計画通りに実験が進められていること、および、2つの実験項目について一定の研究成果を出すことができたことが理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に実施した2つ目の実験項目については、平均正答率(45.4%)が予想(約33.3%)よりも高めに出た。これは、白色顔料がもつ淡いピンク色を視認できた人が比較的多かったことを意味する。この理由として、酸化エルビウムを含む白色顔料と液体透明釉薬の混合物を素焼きタイルの一部ではなく、ほぼ全面に塗布したことが挙げられる。 過去に実施した同様の実験では、有色の希土類酸化物(青色)を含む液体透明釉薬の混合物は、素焼き磁器の一部に少量、塗布していた。このときの平均正答率は、当て推量で得られる正答率(約33.3%)に近い値であったことから、2024年度は同様の手法によって素焼きタイル上に釉薬層を形成し、視認度合いの検証を実施することにする。なお、酸化エルビウムを含む白色顔料を少量、部分的に塗布したとしても、光励起によって可視光と近赤外線の発光が見られること、および特徴情報として可視光画像と近赤外線画像が得られることを確認する予定である。 また、今回作製した白色顔料を有色の陶土と混合することによって、当該陶土の色がパステル調(またはマイルドな色)になることを目視によって確認する予定である。
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