2022 Fiscal Year Research-status Report
前庭眼反射を指標とした空間知覚の多種感覚比較による「酔い」予測方法の開発
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22K12119
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
加藤 弓子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 研究員 (10600463)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 修一 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (60332524)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 前庭眼反射 / マルチモーダル / 聴覚 / 音源定位 / 頭部伝達関数 / 仮想空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、前庭感覚を基礎として、感覚間の関係を量的に検討し、感覚間の不一致を客観的に比較可能な指標を作ることを目的としている。2022年度には、前庭感覚と視覚の関係について、特に視覚刺激の空間的なあいまいさと前庭眼反射(VOR)の変化量との対応データを蓄積し、VORによる位置精度の指標の可能性を検討するとともに、聴覚刺激による検証実験の準備を行うことを計画した。 2022年度は、あいまいさを調整した視覚刺激がVORに及ぼす影響について実験を行い、VORへの影響の量的変化が、知覚された空間位置の精度に対応することが示唆された。結果を国際学会(Barany Society 2022)にて発表した。 視覚刺激で得られた傾向に対して聴覚刺激にて検証を行うため、頭部伝達関数(HRTF)を利用した、音像中の仮想音源位置への注意が前庭眼反射に及ぼす影響を検証する実験の準備を開始した。日本人の平均として作られたHRTFを用いて差育成した音像を利用する場合、前方への音源の定位が困難であることが判明したため、聴覚刺激による実験のデザインを再検討するに至った。検討の悔過、仮想音源に対する定位は、後方に音源位置を設定した場合に精度が高いことが判明し、前庭刺激とともに提示する仮想音源位置を被験者後方に設定するための、実験用ソフトウェアの変更を行うとともに、刺激音の作成を行った。また、仮想音源に対する定位の精度に個人差があることから、被験者ごとに音源の定位精度を評価する実験を合わせて行うものとし、実験計画を立案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
視覚刺激による知覚された空間位置の精度とVORとの関係から、VORの量的変化を指標として、視覚と視覚以外の感覚の空間位置に対する知覚の精度を比較する可能性が示唆された。これは視覚刺激を用いたデータの蓄積と、指標の可能性検討として、予定通りの進捗である。しかしながら、聴覚刺激による実験の準備においては、実験デザインの「再構築が必要となった。当初視覚刺激との比較を想定し、被験者の前方に音源を置いた実験条件を設定したが、前方の仮想音源の定位が不正確であり、音像中の仮想音源位置への注意が前庭眼反射に及ぼす影響を検証することが困難であることが判明した。そのため、仮想音源の定位の特徴を調査し、被験者後方に仮想音源を置いた実験デザインに変更した。この変更に伴い、実験用ソフトウェアの変更、提示する刺激音の再作成、さらに、音源定位の精度を評価する実験系の準備を行った。現在実験デザインの確認のための予備実験を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
仮想的な音像を用いる場合の知覚の特性を見直し、聴覚刺激によって知覚される空間位置の精度とVORの関係を検証する実験のデザインを再構築した。現在、再構築した実験デザインについて、予備実験を行い聴覚による空間位置の知覚精度の検証の仕方、聴覚刺激の提示方法について確認中である。今後、予備実験の結果に基づいて、提示する聴覚刺激の見直しを行い、仮想音源位置の知覚が前庭眼反射に及ぼす影響を検証する。視覚刺激では、知覚される空間位置の精度は刺激の物理的あいまいさとして定義したが、聴覚刺激では、知覚された音源位置の精度を被験者ごとに定位精度を評価することで定義する。被験者ごとに異なる音源位置の定位精度とVORへの影響との関係と、視覚刺激実験とを比較することで、視聴覚間で知覚された空間位置精度を比較する可能性について検討する。 感覚間での空間知覚精度を客観的に比較する指標としてのVORの量的変化を検討し、「酔い」を予測するための基礎的データの蓄積を行う。さらには、マルチモーダルな前庭リハビリの可能性を検討する。
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