2022 Fiscal Year Research-status Report
大域的傍分泌および局所的電気相互作用を共に考慮した膵島が行う血糖値制御機構の解明
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22K12192
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土居 伸二 京都大学, 工学研究科, 教授 (50217600)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 膵島細胞 / 細胞集団 / Hodgkin-Huxley型数理モデル / 大域的・共通浴結合 / 分岐解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵臓に点在する膵島(ランゲルハンス島)という組織(細胞群)は,膵臓全体の体積の1-2%程度の小さな組織であるが,血糖値の制御や糖尿病に関わる最も重要な細胞が集まっている.本研究では,血糖値降下ホルモンであるインスリンを分泌するβ細胞だけではなく,血糖値上昇ホルモンのグルカゴンを分泌するα細胞,ならびに,α,β細胞を制御するソマトスタチンを分泌するδ細胞を含めた膵島細胞集団全体のモデルを用いて,膵島が総体として行う血糖値制御メカニズムを解明することを目的とする.特に,これらのホルモンを介した細胞間の「大域的」相互作用だけではなく,膵島細胞が局所に集まっていることに注目し,電気信号(活動電位)を介した「局所的」相互作用も血糖値制御に関して決定的役割を担っていると考え,Hodgkin-Huxley型の電気生理モデルおよびホルモン分泌モデルを統合した膵島の統合モデルを用いる.シミュレーションだけではなく,分岐解析等の非線形動的システムの解析手法を駆使し,研究目的を達成する. 研究初年度である2022年度においては,まず,膵島を構成する主要な細胞である(インスリンを分泌する)β細胞におけるATP感受性カリウムチャネルに注目した.このチャネルは血糖値レベルに応答しインスリン分泌調節を行う.この血糖値応答性インスリン分泌が,膵α細胞が分泌するグルカゴンとδ細胞が分泌するソマトスタチンによってどのように調節されるか(傍分泌効果)を詳細に解析した. さらに,大域的結合による細胞集団の特性を明らかにするために,共通浴結合細胞集団モデルとその縮約モデルを用いて,その初期状態・中間的過渡状態・定常状態のふるまいを詳細に解析した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膵島を構成する細胞であるα細胞,β細胞およびδ細胞のHodgkin-Huxley型モデルを用いて,その血糖値応答性インスリン分泌特性や傍分岐効果の解析を行うことができており,2022年度の当初計画である「α,β,δ細胞の単一細胞レベルおよび結合系における傍分泌効果と血糖値制御機構の解析」については,達成することができている.さらに,共通浴を通した大域的結合細胞集団の解析も問題なく行っており,進捗状況は「おおむね順調に進捗している」と言える.
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通り,「電気的相互作用が各ホルモン分泌・傍分泌作用・血糖値制御機構に及ぼす影響の解析」を行う.
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Causes of Carryover |
依然として新型コロナ感染症の影響により,学会・国際会議がオンラインで開催されることが多く,当初の想定より旅費が少なくて済んだことにより,次年度使用額が生じた.今年度は,研究発表をさらに活発に行うなど,有効に使用する.
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