2023 Fiscal Year Research-status Report
干潟環境中での多環芳香族炭化水素の高濃度濃縮及び高速分解機構の解明
Project/Area Number |
22K12348
|
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
齋藤 敦子 東邦大学, 理学部, 教授 (50424718)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 環形動物糞 / 還元有機泥 / 多環芳香族炭化水素 / 濃度低下 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、本研究課題の2つ目の問いである「還元有機泥がイワムシ体内を通過することは、PAHsの高速濃度低下に必須であるか?」について重点的に研究を行った。先ず、イワムシが還元有機泥を選択的に取り込み、糞として排泄していることを確認するために、イワムシ糞、還元有機泥、砂泥質等、干潟環境試料を採取し、それらの窒素及び炭素の安定同位体比分析、粒度分析、PAHs分析、顕微鏡観察等を行った。その結果、イワムシ糞と還元有機泥でこれらの値がほぼ一致し、イワムシが還元有機泥を選択的に摂取し、糞として排泄することがほぼ確定した。次に、還元有機泥とイワムシ糞が同質であることが分かった為、両者について、採取直後及び2時間放置後の試料についてPAHs濃度の定量・比較を行った。イワムシ糞は干潟底質上に排泄された直後、還元有機泥は底質を掘り返した直後に、それぞれ試料を2つに分け、一方を即座にドライアイスで凍結させ、もう一方をプラスチックのタッパー上で2時間放置後に凍結させ、実験室に持ち帰った。これらの試料を解凍し、前処理後、ガスクロマトグラフ-質量分析計で3から5環の8種PAHsの分析を行った。イワムシ糞及び還元泥中のPAHs濃度は、2時間の放置によりイワムシ糞ではTotal PAHsで35~55 %の減少が見られたのに対し、還元泥では約8 %の減少に留まった。したがって、PAHs濃度の急速な低下には、還元有機泥がイワムシの体を通過することが、必須であることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の2つ目の問いである「還元有機泥がイワムシ体内を通過することは、PAHsの高速濃度低下に必須であるか?」について、明らかにすることができた。これらの結果は、14th International Polychaeta Conference等で発表すると共に、Zoological Science誌に論文投稿しオープンアクセスとして掲載された。また、本結果は、10th International Conferences on Marine Pollution and Ecotoxicology等での学会発表を行い、論文執筆中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度であることから、これまでの研究で再現性の確認が必要と考えられる部分「植物の葉に付着したPAHs濃度の定量」について、繰り返しの実験を行い、これまでの結果をまとめた国際学会での発表と、論文発表に注力する。
|
Causes of Carryover |
英語論文の校正及び投稿が、次年度にずれ込んだため。次年度5月末に投稿予定であり、その際に使用する。また、これまでの研究結果を、国内及び国際学会で発表することを予定しており、それらの旅費として使用する予定である。その他、PAHs分析の際の消耗品費として使用する。
|