2023 Fiscal Year Research-status Report
多成分衛星観測の統合に基づく硫酸・硝酸・アンモニウム塩エアロゾル経年変動の解明
Project/Area Number |
22K12353
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
関谷 高志 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(地球表層システム研究センター), 研究員 (00781460)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大気化学 / データ同化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、二次生成無機(SNA)エアロゾルの前駆物質の排出量を逆算に加えて、エアロゾル光学的深さの観測から大気エアロゾル濃度を推定することができるデータ同化システムを開発を行なった。さらに、前駆物質およびエアロゾル光学的深さの衛星観測の統合利用によって、SNAエアロゾル成分の推定を改善することができるかを明らかにするために、開発したデータ同化システムを用いて、3種類の観測システム実験:(1)エアロゾル前駆気体物質とエアロゾル光学的深さの衛星観測を統合利用したデータ同化計算、(2) エアロゾル前駆気体物質の衛星観測のみ利用したデータ同化計算、(3) エアロゾル光学的深さの衛星観測のみ利用したデータ同化計算を行い、それぞれの観測のデータ同化による影響を評価した。その結果、PM2.5濃度の推定に対してはエアロゾル光学的深さの観測が大きく影響するのに対し、SNAエアロゾル濃度の推定に対しては前駆気体の観測が大きな影響を与えることを明らかにした。さらに、データ同化に使用していない地上現場観測・航空機観測のPM2.5、SNAエアロゾルの対する推定精度を評価した。PM2.5に関しては、データ同化後にも負のバイアスが残ったものの、(1)の観測システム実験では改善がみられた。SNAエアロゾルに関しては、気体・エアロゾル衛星観測の統合利用(1)によって、それぞれの観測を個別に利用する(2,3)よりも大きくバイアスが減少することが確認され、気体・エアロゾル衛星観測の統合利用の有効性を示すことができた。 さらに、前年度に解析を進めた新型コロナウィルス蔓延時の社会経済活動低下に伴う排出量減少がSNAエアロゾルと放射収支に与えた影響の評価については、同期間のCO2・対流圏オゾン減少の放射影響との比較も含めて論文としてまとめ、高インパクト誌(Science Advances)に受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
エアロゾルに関するデータ同化システムの開発は予定通りに完了したものの、最新世代の衛星観測プロダクトが利用可能になってきたため、研究のインパクトを高めるため、それらを統合利用することの評価を優先的に行っている。そのため、長期計算の実施が予定より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は最新世代の衛星観測プロダクトの統合利用の影響評価を引き続き優先的に行う。それらと並行して長期(役20年間)の再解析データセットの構築を目指す計画である。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況や学会の開催予定を考慮し、最終年度に研究成果発表のための旅費や論文出版費に充てるため。
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Research Products
(8 results)