2022 Fiscal Year Research-status Report
沿岸性カイアシ類の分子系統地理から探る南極海氷の生成と輸送
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22K12363
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
黒沢 則夫 創価大学, 理工学部, 教授 (30234602)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 南大洋 / 海氷 / カイアシ類 / 種内遺伝子多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
カイアシ類をトレーサーとした南極海氷の生成と流動の検証手法の確立を念頭に、南極海氷中に見いだされる沿岸性カイアシ類の分子系統地理学的解析を行っている。 本年度は、第61次南極地域観測隊により2019年12月から2020年3月に南大洋インド洋区の沖合22カ所から採取された浮氷を融解した試料(10%ルゴール液固定、65サンプル)のうち、リュツォホルム湾、ダンレー岬沖、トッテン氷河沖の3つの海域で採取された計18個の海氷について、カイアシ類の分析を行った。実態顕微鏡下で、3種のカイアシ類:Stephos longipes, Paralabidocera antarctica, Drescheriella glacialisを選別し、それぞれ成長段階(ノープリウス幼生期、コペポダイトⅠ~Ⅴ期および成体)ごとに計数し、個体数密度を算出した。また、海域ごとに1種につき5個体(3海域3種で計45個体)を無作為に選び、1個体ずつ改変Lysis buffer法によりDNAを抽出した。このDNAを鋳型としてPCR法によりミトコンドリアCytochrome b遺伝子(cytb)を増幅し塩基配列を決定し、最尤法により進化系統樹を作成した。 個体数密度と種内遺伝子多型のいずれにおいても、3種間それぞれに特徴的な傾向が認められ、当初のねらい通り、これらカイアシ類の生物系統地理学的特徴が、南極海氷の生成と流動の検証手法のひとつとして用いることが可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多数の海氷試料から3種のカイアシ類を選別し、計45個体について遺伝子解析まで進めることが出来た。その結果、本年度の最も重要な目標であった「予備実験から得られていた沿岸性カイアシ類の種内遺伝子多型の存在を検証する」ことを達成した。またこの実験を通して、今後の研究における方法論を概ね確立することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は次の5つについて進める。 (1)研究対象とする3種のカイアシ類について、さらに多くの個体を南大洋浮氷中から選別し遺伝子解析に供する。(2)オーストラリアタスマニア大学の研究協力者から、南極沿岸定着氷由来のカイアシ類試料の提供を受け、遺伝子解析を実施する。(3)8月にタスマニアで開催されるオーストラリア研究協力者らとのワークショップに出席し、本研究の紹介を行うとともに更なる国際協力体制の構築を試みる。(4)12月に開催される極域科学シンポジウムにおいて研究成果の一部を公表する。
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Causes of Carryover |
遺伝子解析を実施した個体数が当初の予定よりも数なかったため「その他」の経費の執行額が減り、57,267円の繰越額となった。これについては、本来の目的通り遺伝子解析委託費として2023年度に使用する。
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