2022 Fiscal Year Research-status Report
ナノ材料に対する細胞毒性を用いたNLRP3インフラマソーム炎症機構の解析
Project/Area Number |
22K12396
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
北見 俊守 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (70708594)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ナノ材料 / インフラマソーム / 炎症 / 化合物スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
自然免疫応答の1つであるNLRP3インフラマソームは、細胞内の生理的変化を感知することで幅広い病原体に対しての免疫応答を可能にする一方、ナノ材料、環境汚染物質、疾患関連物質などにも反応し、炎症性疾患を促進させる。しかし、物質の何が免疫細胞によって認識され、どのようなメカニズムにより炎症機構を活性化させているか明らかでない。本研究では物質の性質を簡単に多様化できるナノ材料を用い、物質の性質と免疫応答の関係を解明する。研究初年度においては、20種類のナノ材料に対する炎症応答をマクロファージで検証し、炎症活性化の強いナノ材料を同定できた。その中でも活性化が最も強かった4種類それぞれに対して化合物スクリーニング(対1280化合物)を行い、炎症活性化の阻害剤を同定することができた。コントロールとしてNLRP3インフラマソーム活性化剤であるニゲリシンを用い、データをフィルターすることで、ナノ材料特異的な阻害剤を同定することができた。ナノ材料特異的な阻害剤は、細胞外物質の取り込みに関わるキナーゼシグナル伝達に関わっていることが分かった。またそれらのシグナル伝達の上流に位置する受容体に対して抗体を用い炎症の阻害を検証したところ、ナノ材料の取り込みに関わる受容体の候補を同定することができた。今後はさらに幅広いナノ材料と化合物を検証し、どのような物質の性質がNRLP3インフラマソームの活性化に強く関わっているかを解析する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、炎症を活性化させるナノ材料のスクリーニングに加え、ナノ材料に対する炎症阻害剤の化合物スクリーニングを計画していた。ナノ材料、またそれらに対する阻害剤のスクリーニングの両方が計画通りに進み、活性化作用が強いナノ材料とそれらに対して特異的に働く阻害剤が見つかった。これらは、本研究の炎症機構解析の基盤となる結果である。これらの阻害剤をもとにその上流に位置する受容体の候補を同定することができ、より詳しいメカニズムの解析を実施することが可能になった。マウスでのin vivo実験では、ナノ材料による炎症活性化が確認できたが、活性度がLPSなどの代表的な活性化剤に比べ弱いため、いくつかの検討実験が必要となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2年目においては、まだ検証していないナノ材料のスクリーニング、またキナーゼシグナル伝達に特化した化合物ライブラリーの使用なども検討しながら、より幅広い「ナノ材料ー阻害剤」の組み合わせを検証し、メカニズム解析に繋げる。またマウスでのin vivo実験で検証したナノ材料の炎症活性化が比較的弱いため、マクロファージの細胞実験とin vivoでの実験データをより詳しく比較できるように対応を進め、細胞とin vivoの両方で強い炎症応答を示すナノ材料の同定を目指す。
|