2023 Fiscal Year Research-status Report
環境中での薬剤耐性菌の制御に向けた,原生生物のバイオフィルム捕食作用の評価
Project/Area Number |
22K12404
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
小林 由紀 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (80759457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 健太 山口大学, 共同獣医学部, 准教授 (20582208)
度会 雅久 山口大学, 共同獣医学部, 教授 (40312441)
松井 一彰 近畿大学, 理工学部, 教授 (40435532)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 薬剤耐性菌 / ワンヘルス / 原生生物 / 薬剤耐性遺伝子 / 捕食消化 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在, 薬剤耐性菌は世界的に重要視されている問題の一つである. 薬剤耐性菌は, 病院以外にも存在していることが, 多くの研究から報告されており, 畜産農場や水産養殖場, 河川や土壌などの環境中にも広がっている. 従って, 分野を超えて薬剤耐性菌問題に取り組むワンヘルス・アプローチが重要である. 多くの先行研究で, すでに, 環境中に薬剤耐性菌や薬剤耐性遺伝子が存在していることがわかってきている. しかし, 病院や住環境から自然環境に排出された薬剤耐性菌を具体的に処理する方法を調査した研究は少なく, また, その多くが高度処理や消毒剤の仕様を必要としており, コストや環境への負荷が大きな物となっている. そこで, 住環境から排出される薬剤耐性菌を, 下水処理施設で効率よく処理し, 自然環境への流出を現在よりも抑えるために, 活性汚泥中の原生生物が利用できるのではないかと考えた. 活性汚泥とは, 細菌や原生生物の集合体である. 活性汚泥は下水中の有機物を細菌が処理し, 増殖した細菌を原生生物が捕食し, 原生生物は動物プランクトンによって捕食されるという, 微生物ループと呼ばれる微生物食物連鎖の仕組みを利用したものである. つまり, 活性汚泥において原生生物は細菌の捕食者として存在しているため, この仕組を利用することで, 原生生物を用いた薬剤耐性菌の処理を行える可能性がある. 本研究は, 薬剤耐性菌の対策として, 原生生物が有用であるか検証するために, 下水処理場で用いられる活性汚泥中の原生生物である繊毛虫Parameciumを用いて, Parameciumによる薬剤耐性菌捕食作用の評価を行うことを目的とした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原生生物のゾウリムシの一種は薬剤耐性菌を捕食するだけでなく, 薬剤耐性菌が保有している薬剤耐性遺伝子まで消化できることが明らかになった. 一方で,別のゾウリムシは薬剤耐性菌を捕食・消化できるものの薬剤耐性遺伝子までは消化できなかった. このことから, 薬剤耐性遺伝子の消化に関してはゾウリムシの種によって異なっていることが示唆された. また,別の実験では河川のバイオフィルム内にコリスチン耐性菌を検出した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,薬剤耐性菌を捕食消化したゾウリムシ体内に,薬剤耐性遺伝子が残存していないかを確認する.また薬剤耐性菌でバイオフィルムを作成し,ゾウリムシに与えバイオフィルム内の耐性菌を捕食消化できるかを確認する.
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Causes of Carryover |
実験の進捗が思った以上に進展したため,次の実験(翌年)に経費を使用したく経費を一部残した.次年度はその経費を用いて,さらに研究を深めるため,モデル生物(ゾウリムシ)を再度購入し,培養を開始し,薬剤耐性菌でバイオフィルムを作成し,ゾウリムシに捕食させ,ゾウリムシの捕食消化効果さらにはゾウリムシ体内に耐性遺伝子の残存の有無を確認し,本来の研究目標をサポートする研究結果を提出する.
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