2022 Fiscal Year Research-status Report
衛星画像解析と小型計測器による化学物質と浮遊微粒子の分布と挙動把握
Project/Area Number |
22K12406
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
大橋 勝文 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (00381153)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 浮遊微粒子 / ひまわり8号 / インドネシア / ヘイズ / 桜島 / 火山灰 |
Outline of Annual Research Achievements |
火山活動による噴煙、大規模森林火災、工業地帯から排出される煤煙などに含まれる化学物質や微小浮遊物質(PM)が、呼吸器系を含む人体に悪影響を及ぼすので、その量および分布の把握が求められ、多くの環境観測衛星により観測されている。環境観測衛星は地球を周回しながら地球全体を観測しているが、観測場所上空に雲があると雲に遮られて正確な観測ができない。しかも、観測時間が限られていてイベントと同期しないことがある。そこで、環太平洋地域を10分間隔で常に観測している静止衛星の「ひまわり8号」の可視から赤外線領域の画像データから独自のアルゴリズムで、化学物質やPMの地域分布を解析する。 「ひまわり8号」などの衛星画像解析は対象地域に雲が重なって撮影されるため、対象地域の環境を把握するためには雲を如何に除くかが鍵になり、多くの研究者がその手法を考案している。地上の温度を推定できれば正確に雲を除けるため、ゴダードサイエンスセンターの気象データの再解析データの利用を試す。また、複数の環境観測衛星データや地上に設置してある観測データと「ひまわり8号」画像データとを比較しながら機械学習などの手法を利用することで「ひまわり8号」画像データの活用使用を開発する。また、桜島の噴火により排出される火山灰分布の把握には、鹿児島県垂水に設置してあるXバンドレーダーによる観測データも活用する。 衛星画像は、上空が雲で覆われると地上の状況を把握できないため、異なるサイズの浮遊微粒子を計測できる地上に設置する浮遊微粒子計を予算不足で1・2台程度の試作を進めてきたが、この科研費予算により計測器を複数台作成し、地上に設置する。また、複数台の時間ずれがないようにGPSによる時間補正機能の動作確認などを進めながら、研究を進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
衛星画像による火山灰分布、インドネシアで生ずるヘイズ、東シナ海を越境する浮遊微細粒子に関する研究を進めた。まず、桜島噴火の火山灰把握に関しては、正確に火山灰分布を把握できるように気象静止衛星の「ひまわり8号」の衛星画像をどのように活用するかを機械学習等の手法により導くには、火山灰分布を正確に示した教師データが必要になる。桜島を中心とする霧島連山、薩摩半島、大隅半島内では、垂水に接地してあるXバンドレーダーにより火山灰分布を把握できる。ただし、噴火直後にはレンジサイドローブエコーが、降雨を含む雲はレーダーに移ってしまう問題があった。そこで、レンジサイドローブエコーは噴火領域を示すフィルターを降雨画像は火山灰を追跡しながら火山灰分布を把握し火山灰分布の外側の映像は除く処理を加えることで、Xバンドレーダーから教師データを把握することができた。次にインドネシアの森林火災により発生するヘイズ量を「ひまわり8号」のアルベド値からAerosol Optical Density (AOD)を推定する式をパランカラヤにNASAが接地した観測場所と「ひまわり8号」のアルベド値との回帰解析から導き出した式から中央カリマンタン地方のAOD分布を見積もった。さらに、東シナ海を越境する浮遊微細粒子を雲と伴に移動するとして、「ひまわり8号」の赤外線画像から雲の動きを把握し、長崎大学が地上で観測している浮遊微細粒子濃度とを比較して、東シナ海を浮遊微細粒子が越境する挙動について考察した。 また、桜島の噴火や火山灰の挙動を把握するために鹿児島大学工学部先進工学科情報生体工学棟屋上にカメラを設置した。今年度の予算により、小型浮遊微粒子計測器を複数台作製し、設置前の動作確認を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
長崎大学の中山先生が地上で計測した浮遊微粒子の時系列変化と鹿児島大学で「ひまわり8号」の赤外線衛星画像から推定した把握した浮遊微粒子の動きとをまとめ、東シナ海を越境する浮遊微粒子の挙動について日本地球惑星科学連合2023年大会(JpGU2023)で発表する予定である。さらに、インドネシア・カリマンタン島やスマトラ島で起こる森林火災で生じたヘイズの挙動についてまとめ論文に投稿する予定である。また、小型浮遊微粒子観測装置をいろいろな場所に設置する予定である。 機械学習や人工知能の技術を活用して、衛星データから正確に浮遊微粒子分布を把握する。昨年度、Xバンドレーダーによる観測結果から不要なデータを除いたデータを学習データとした機械学習により、「ひまわり8号」の複数バンドの画像データの活用手法を見出す。機械学習により得られた衛星画像解析手法をXバンドレーダーでは観測できなかった霧島連山、薩摩半島、大隅半島の外側に移動する火山灰の挙動把握に用い、機械学習で得られた手法について考察する。 「ひまわり8号」などの衛星データを活用するためには、上空の雲の除法を如何に除くかが鍵になる。昨年度までは、あるピクセルの温度が指定温度以下ならば雲と判定していたが、季節や時間により地上の温度が異なるため、正確な雲除去が難しかった。そこで、ゴダードサイエンスセンターが公開している再解析データから観測領域の地表温度変化を正確に把握する手法を試す。観測所のデータとの比較からこの手法のために作成したアルゴリズムの検証を行う。また、データ同化などの技術も利用する。 さらに、ヘイズ以外にも、SO2、NO2やO3などの化学物質を観測する環境観測衛星などのデータと「ひまわり8号」の複数バンドの画像データとの関連性を人工知能などの技術を使って新しいデータ解析手法開発を目指す。
|
Causes of Carryover |
小型計測器の部品を年度内に納入可能であることを確認して発注したが、次年度6月に納入延長の連絡が来たため、次年度に支払うことになった。
|