2022 Fiscal Year Research-status Report
安定Cs・Kの固液分配に基づく作物への放射性Cs移行リスクの評価・低減方法の開発
Project/Area Number |
22K12419
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
江口 哲也 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター, 主任研究員 (40710356)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / 安定セシウム / カリウム / 固液分配 / 土壌診断 / 潜在リスク評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物根は交換性から直接Csを吸収するのではなく土壌溶液に分配されたCsを吸収するため、土壌溶液Cs-137の推定は作物への放射性Cs移行リスク評価を高精度化させ、環境中でのCs-137の挙動を解析するために重要となる。令和4年度は交換性安定Csの固液分配から土壌溶液のCs-137濃度を推定することを試みた。 福島県および周辺地域で採取した8土壌について固液分配係数に変化を及ぼさない安定Cs添加量を求め、微量の安定Csを添加した水稲の小規模ポット栽培を行った。交換性画分の水稲地上部への移行係数は、安定Cs添加の有無やエージング程度(乾湿処理回数)によらず、Cs-137と安定Csでほぼ同じ値となった。土壌溶液からの吸収においてはCsの同位体分別は想定されないため、交換性画分の移行係数がCs-137と安定Csでほぼ一致したことは、交換性画分の固液分配係数がCs-137と安定Csで一致すること、さらには、土壌溶液Cs-137濃度が交換性Cs-137濃度、交換性安定Cs含量および土壌溶液安定Cs濃度から計算可能であることを強く示唆する。 添加した安定Csの水稲地上部への移行係数は、Cs-137の移行係数と強い正の直線相関(決定係数 > 0.95)にあった。このことから、微量の安定Cs添加したポット栽培により、非汚染地域においても潜在的な作物への放射性セシウム移行リスクが簡便に評価可能であると考えられる。また、Cs-137の移行係数および添加安定Csの移行係数はともに乾湿処理により低下しており、乾湿処理によりCsのエージングを再現できること、試料採取時(震災から5~8年)においても放射性Csのエージングは進行中であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
土壌溶液のK濃度、交換性Cs-137濃度および安定Csの固液分配から玄米への放射性Cs移行リスクを高精度に評価する方法の開発を試み、大規模ポットによる水稲の栽培を行ったが、用いた土壌の交換性K濃度が高く一部の玄米でCs-137濃度が定量下限以下となったため試験に失敗した。令和7年度に再試験のよてい。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度はソルガムの植え付けにより土壌の交換性Kを消耗させたうえでダイズのポット栽培試験を行い、土壌溶液のK濃度、交換性Cs-137濃度および安定Csの固液分配から玄米への放射性Cs移行リスクを高精度に評価する方法の開発を試みる。また、栽培期間中の土壌溶液の採取を行い、K濃度および安定Cs濃度を室内試験により求める方法の検討を行う。
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Causes of Carryover |
競争入札による値引きのため。試薬の購入に使用予定。
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