2022 Fiscal Year Research-status Report
Regional Effect of Woody Biomass Business
Project/Area Number |
22K12501
|
Research Institution | Shokei Gakuin College |
Principal Investigator |
東 愛子 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 准教授 (10589534)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 再生可能エネルギー / 自治体 / 間接的経済波及効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、再生可能エネルギー事業が地域社会経済にもたらす効果に焦点をあて、この地域効果を最大限引き出す仕組みや地域アクターの関係性の解明することにある。 初年度は、再エネの地域効果を引き出すために、地域新電力と自治体がどのような仕組みづくりを始めているかを知るために、山形県最上町の木質バイオマスを利用した熱供給事業や岩手県企業局が保有する水力発電を調査した。 岩手県はこれまで、保有する水力電源を一括して随意契約で旧一般事業者に供給していたが、近年は公募プロポーザル方式に移行し、県内の地域新電力が応札するケースが出てきている。全電源を一括して公募に出すのではなく一部を切り出して公募に出すことによって、地域新電力の規模に合った活用ができるように工夫されており、間接的に地域新電力を育てることにつながっていることも明らかになった。さらに地域新電力と地元自治体の間で電力供給契約を結ぶことによって、地域新電力が一定規模の供給力を確保することの後押しとなっているとともに、地域新電力が自治体に安く環境価値を販売することによって、地元自治体のゼロカーボンシティの目標作成や達成の後押しとなっている。 山形県最上町は、町の事業として間伐と間伐材の引き出しを行っている。施業は町内企業が行うが、集落ごとに間伐の意思確認などのコーディネートは町が請け負っており、この町の仲介が山林所有者の理解や協力を得やすい体制となっている。 ここまでの2調査地は、いずれも地域事業者がエネルギー供給事業を行っているが、地域事業者を育て、その活動を後押しする役割を自治体が果たしていると評価できる。また再エネの環境価値が自治体の気候変動目標の達成に貢献する還流も見られており、再エネの地域効果を引き出す仕組みを検討する上で非常に重要な事例といえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、再エネの事業形態と地域効果の関係性を比較分析することに主眼を置いている。特に、経済効果の中でも排熱を利活用した商品開発や、循環型社会構築に取り組む町の姿勢そのもののブランド化などに代表されるような再エネ事業から派生する「第1次間接効果」や、原材料搬出補助に使われた地域通貨の流通などから派生する「第2次間接効果」に関してヒアリングをもとに示す。また、売電収入を活用し地域課題を解決する施策を導入するなどから得られる「地域社会効果」も再エネ事業が地域にもたらす効果に含めて測ることと目標としている。 初年度は、これらの効果を引き出すために、自治体と事業者がどのような協力体制を敷いているかが調査の主眼であった。特に、地域新電力が再エネ資源にアクセスしやすいような自治体側の環境づくり、再エネ環境価値を地域の気候変動目標に活用する新電力と自治体の協力体制が、地域社会効果を引き出すベースとなっていることが明らかとなっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究のポイントは2つある。第1に、自治体の気候変動目標と地域新電力の活動の関係である。初年度の調査地である岩手県公営電気事業は、非FIT電源を地域新電力に公募で売電しているが、新規のFIT電源に関してはコスト回収の観点からFITで売電している。非FIT電源はGHG削減の追加性がないので、自治体のRE100目標の達成に寄与するとはいいがたい。地域再エネの環境価値を地域の自治体の気候目標に還元するためには、FIT特定卸供給契約を結ぶか、PPA契約で電気価値と環境価値を合わせて相対契約をするかのいずれかの手法が有効であるが、前者は昨今の電力市場価格の高騰によって難しい状況にある。よって次年度以降は再エネの環境価値の地域活用も含めた供給契約のあり方も検討課題としたい。 第2に、間接経済効果や地域社会効果を把握すべく、さらに詳細に関係アクターへのヒアリングが必要である。例えば山形県最上町のバイオマス熱供給事業は、熱供給事業そのものには町の補助が入って成立している。町側は熱供給事業は赤字事業で補助がないと成立しないと捉えているが、上流の森林育成、雇用効果、熱供給住宅への移住効果等を含めた地域効果は捉えられていないのが現状である。したがって、エネルギー事業を起点として生じる効果を幅広く積み上げて地域効果を測ることによって、域内エネルギー事業への評価が変わる可能性がある。よって、今後はこの効果の積み上げに注力する。
|
Causes of Carryover |
コロナの影響で特に地方部へのヒアリングが困難な場合が多く、当初計画よりもヒアリングの実施が少なくなり、初年度の旅費使用が抑えられてしまった。次年度は地域新電力や地域熱供給事業の詳細のヒアリングを予定しており、初年度予算を繰り越して旅費に使用する見込みである。
|