2023 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive Study on Soviet Far East under Stalinist Regime in the 1930's
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22K12536
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
寺山 恭輔 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (00284563)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | スターリン / ソ連極東 / シベリア鉄道と動員 / 満洲事変と満州国 / ソ連の通信網構築 / 気象観測の拡大 / 食料確保と飢饉 / ピウスツキのポーランド |
Outline of Annual Research Achievements |
①1920年代~1930年代にかけてのスターリン外交を検討。東西からソ連を挟み込む日本とポーランドに対し、不安定な政治状況が生じるたびに、ほぼ同時にソ連が不可侵条約締結を提案していたことに着目、その意図や背景の特徴を解明した。ロシア・ソ連のが以降を見る際、全方位、特に東西に注目する必要性を強調した。論文として発表。 ②満洲事変、満洲国建国がスターリン体制に及ぼした大きな影響の一例として、農業等の国民生活だけでなく、軍事的にも重要な気象観測網の極東方面への拡大過程を考察した。論文として発表。 ③②と同じく事変後、広大なソ連国家統治において重要性が明白な通信事業の拡大を論証した。それを担った通信人民委員部の活動、教育機関新設による人材育成、通信設備の開発、満洲国や日本の宣伝放送への妨害電波、対抗放送等について考察した。論文として発表。 ④他の地域から食料供給を受けていたソ連極東は、満洲事変後の需要拡大で莫大な食料供給が必要になった。当時の穀倉地帯における不作、鉄道・船舶による輸送の困難、穀物の輸出による外貨獲得と不足値への補填、備蓄や飢饉との関係等、複雑な過程の一端を明らかにした。論文として発表。 ⑤①で論じたポーランドの有力な政治家ピウスツキは、日露戦争時に来日しロシアに対する共闘を持ちかける一方で、ロシア革命時にポーランド国家再興を果たした。ロシアでは独裁者として敵視されていたこの興味深い人物の英語による伝記を紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ロシアによるウクライナ侵略戦争が3年目に突入しており、日本国外務省のロシアへの渡航制限も解除される気配はなく、本研究が当初想定していたモスクワ、ハバロフスク等の公文書館における史料収集を遂行できないのが大きな理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
30年近く収集を続けてきたロシアの公文書館史料を様々な観点から読み直し、本研究が対象とする当該時期のソ連極東情勢について新たな視点で再検討しているところである。 最終年度の今年度、状況に変化がなければロシア以外の旧ソ連構成諸国や欧米のロシア研究拠点を訪問して史料を収集するなど、新たな展開を模索したい。
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Causes of Carryover |
本研究はロシアの公文書館における史料収集を課題にしているが、ロシアの対ウクライナ侵略戦争により、日本国外務省がロシアへの渡航自粛を促しており、渡航費用を翌年度に繰り越す必要があったため。
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