2022 Fiscal Year Research-status Report
ケイパビリティ・アプローチによる分析を用いた東日本大震災被災者の生活再建動向調査
Project/Area Number |
22K12561
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鴫原 敦子 東北大学, 農学研究科, 学術研究員 (80359538)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 東日本大震災 / 被災者支援 / 生活再建 / 原発事故 / 復興 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究期間の初年度にあたる本年は、以下の3つの活動を軸に研究を行った。 まず第一に、東日本大震災から12年を経過した現在までの「復興」をめぐって蓄積されてきた基礎資料の収集と既往研究の整理を行った。とりわけ震災から10年を機に、各行政機関などからはこれまでの「復興」を検証する目的でのとりまとめが出されている。例えば復興庁による「東日本大震災の復興政策10年間の振り返りに関する有識者会議」による議論と基礎資料、また宮城県における「宮城県震災復興計画の検証」等の他、報道機関や震災復興関連の活動を行った事業体なども10年間の活動のとりまとめを行ってきている。これらを今後の検証作業の基礎データとして用いるために収集・整理を行い、先行研究における論点の整理や課題の洗い出しを行った。 第二に、本研究は、津波被災者と原発事故被災者の両者を視野におさめた生活再建動向調査を予定しており、またその具体的な権利回復状況や課題を動態的に理解するための分析視角として、アマルティア・センによるケイパビリティアプローチを用いることにしている。本年は、その観点からの考察を行う一事例として、原発事故被害の影響下におかれた生産者を中心とした現状の「復興」下の課題についての分析・検討を行った。 第三に、東日本大震災が地震・津波被害と原発事故被害という広域複合災害であったことに鑑み、自然災害と原子力災害をどのように統合的に把握するかについて、社会科学領域での理論的検討を始めるための文献調査にも着手した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり、「復興」関連基礎資料の収集と先行研究の整理に基づく論点・課題の洗い出しを行った。これについては今後も継続していく予定である。 一方で、当初の予定では、来年度以降に着手する予定となっていたアンケートおよび聞き取り調査を具体的に実施するための予備調査に着手する予定であったが、コロナ感染拡大のため現地での聞き取りなどは制約せざるをえず、調査票作成の手がかりにするための聞き取り調査はやや不十分であった。 来年以降は、予備調査を進めながらあわせて調査票の作成、改訂を行い、基礎的調査と同時並行的に本調査を進めていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年行った文献調査と、来年実施予定の予備調査をもとに、次年度以降は順次、対象地域別のアンケート調査(本調査)を行っていく予定である。 特に本調査では、宮城県内の津波被害地域を3つの調査エリア(県北、県央、県南)に、また原発事故被害調査エリアは2つの調査エリア(県北、県南)に分け、同様の質問項目および地域的特性に応じた対象地域別の質問項目からなるアンケート調査を実施する予定である。なかでも県などによる調査が震災後10年で打ち切りとなった災害公営住宅居住者に関する調査については、その後の生活再建動向を把握する上で重要な位置づけとなるため、早期に実施に着手し、継続的調査を行っていきたいと考えている。
|