2022 Fiscal Year Research-status Report
Creating a system for sustainable nutritional improvement from children to the community people in rural areas of Sierra Leone
Project/Area Number |
22K12568
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
藤井 千江美 高知大学, 教育研究部医療学系看護学部門, 助教 (80888511)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 栄養改善 / 母子保健 / モリンガ / アフリカ農村部 / 持続可能なしくみ作り |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のベースとなる活動は、2022年4月から各小学校エリアに存在する母親支援グループも対象に含め、小学校と協働してモリンガと野菜農園の運営管理を行っている。そして現在は週2回、モリンガ葉・粉末が入った学校給食を提供している。母親支援グループも対象に活動を進めることで、年間を通してモリンガ学校給食の確実な提供と、地域の女性や母親に食と栄養そしてモリンガについての知識が普及し、各家庭でもモリンガ葉を使った料理が提供されるしくみ作りを目標にしている。 本研究の目的は、①モリンガと取り組む持続可能な栄養改善のしくみ作りの活動が、児童の栄養状態改善に効果があるか、②学校だけではなく母親支援グループも巻き込むことで、母親や地域女性の栄養意識を高める波及効果が得られるかを検証することである。 2022年9月と2023年3月にシエラレオネを訪れ、本研究の各目的に対して以下の調査を実施した。研究目的①に関しては、モリンガ葉・粉末を学校給食に提供している2ヶ所の小学校と提供していない2か所の小学校で、地元NGOと教員のサポートのもと、各小学校でランダムに1年生から4年生の各学年の児童を男女別に各25名選び身体測定を実施した。最終的には、提供している2か所の小学校で計411名、提供していない2か所の小学校で計382名に身体測定を行い、3月渡航時にも同じ児童を対象に実施した。今後も半年ごとに身体測定を実施し、WHOのBMI for age for 5-19 years old にあてはめ、「痩せ過ぎ」「痩せ気味」「普通」の児童の割合を経時的にみていく。 研究目的②に関しては、モリンガ葉・粉末を学校給食に提供している2か所の児童母親や保護者計69名を対象に、インタビュー調査(自宅での食事内容や回数、親の職業と教育レベル、そしてモリンガの知識や健康意識に関する項目など)を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究のベースとなる各小学校のモリンガの生育状況が悪いことが主な理由である。現地関係者から挙げられた主な課題は、雨季(特に7月~9月)は非常に雨量が多いため、モリンガの葉も落ちるし根腐れしてモリンガが育たないこと。また乾季(10月~5月)は、水不足でモリンガが育ちにくいことである。それに加えて、新しいことに取り組む地元関係者のモチベーション向上と知識定着の難しさが、進捗状況の遅れの理由としても考えられる。シエラレオネでは、モリンガは主にマラリアの治療薬として使用されており、多くの栄養が葉に含まれていることは知られていなかった。活動当初からモリンガが持つ栄養について説明を行ってきたが、地元関係者のモリンガを育てるという活動意欲にはまだつながっていないことが明らかになった。その為、現在のモリンガ葉学校給食の提供回数は、各学校ともに週2回、1児童1回あたりのモリンガ粉末量は約2.5gであり、本研究が目指す週5回1児童10g/回にはまだ遠く及ばない状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度の2回の現地調査の結果、現状の継続では本研究の目標となるモリンガ葉の提供量の実現見通しは厳しく、研究のベースとなる活動に関して、下記の対応策を実施していく。 1)現在の活動の継続と同時に、各児童の家で1本の「マイ・モリンガ」を育て、各児童が持ち寄るモリンガ葉を母親支援グループが粉末製造し学校給食に提供、そして各家庭でもモリンガ葉が料理に使用されるしくみにも力を入れていく。各家庭で1本モリンガの木を育てることで、モリンガ葉・粉末の量が現状よりも多く給食に提供されること、特に乾季の水遣りが容易になること、責任の所在が各家庭になること、そして児童が苗木を育て採取した葉を学校に持ってくることで児童の農業への関心や教育面にも良い影響を与えることが期待される。 2)地元関係者の知識定着に関しては、過去に実施した各研修(モリンガ農園の運営管理、モリンガ葉粉末の製造と貯蔵、モリンガ料理の調理方法など)のマニュアルを作成し、マニュアルに基づいたモニタリング・指導支援を行う。 3)地元のモニタリング・指導支援を強化するため、毎月提出のモニタリングフォームの改訂を行う。
|
Causes of Carryover |
シエラレオネの小学校では、身体測定を実施しておらず、今回地元NGOも教員も初めての経験となった。そこで2022年度は、身体測定の研修は実施せずに、藤井が直接実施しながら指導していく方法で行った。そのため、研修費用は次年度へと持ち越しになった。またブルキナファソからの外部講師に関する費用は、本研究のベースとなる活動に対する助成金から出すかたちをとった。 次年度は、現地への年2回の渡航に加えて、国内ではすでに得られたデータ分析に力を入れていく。それに伴う栄養の専門家からの指導の場への参加、そしてモリンガ乾燥葉粉末の栄養分析も行う予定である。 またデータ分析とともに、2023年11月の日本国際保健医療学会での口頭発表や、海外の学会での発表もしくは海外ジャーナルへの投稿も行っていく予定であるため、それに伴う国内・国外旅費や英語論文校正費にも使用していく計画である。
|