2022 Fiscal Year Research-status Report
観光資源化が進む地域鉄道の災害リスクを考慮した事業継続計画策定手法の開発
Project/Area Number |
22K12603
|
Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
小池 則満 愛知工業大学, 工学部, 教授 (50293741)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 災害 / 地域鉄道 / 事業継続 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、我が国の観光資源化の進む地域鉄道路線(いわゆるローカル線)と災害に関する歴史的背景、近年の構造物被害、観光に関する展開状況から、リスク指標の構築を行い、鉄道事業者の事業継続計画立案に関する方法論について考えることを目的としている。 初年度である今年は、災害ハザードの視点から地域鉄道の実態把握に努めた。まず豪雨によって橋梁流出の被害を受けた路線などの現地調査、構造物老朽化等の調査、被災した場合の補助制度やそれに対する研究レビューなどを行った。昭和期において沿線で観光開発がおこなわれ、しかしながらレジャーの多様化やマイカー普及等で観光路線としての性格を失い、存続に関して議論がなされている鉄道路線の沿線住民に対するアンケート調査を行った。 以上の調査から、長大橋梁流出のような大きな被害を受けた場合の公的補助には、その路線が地域にとって必要不可欠なもので、継続的に運営されていくための熱意や具体的施策が求められること、車両基地のような事業継続に関わる重要な施設は浸水エリア外にある事業者が多かったが、中には大きな被害が生じる可能性がある事業者もあり、検討が必要と考えられた。またアンケート調査からは、沿線観光資源とのコラボレーションの必要性を感じている住民も多いこと、通学需要への対応を求めることが多いこと、一方で、沿線に多大な負担が生じる場合にはバス転換などの施策もやむを得ないと考えている住民も一定数いることなどが明らかとなった。昭和期に開発された観光資源と鉄道との関係を再構築することも重要と考えられ、災害による運休リスクなども勘案しながら事業継続について考えていくことが必要といえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、地域鉄道の実態から災害リスクを的確に把握するための調査を重点的に行う予定であった。最新の災害想定モデルはもちろんのこと、災害史等を考慮した災害シナリオを構築するための方法を考え、あわせて、公共交通機関としての社会的要請と観光資源としての地域からの要請との差異や重みづけについて、理論的、制度的な視点から、整理を行うこととしていた。 この計画に沿って地域鉄道に対する災害ハザードの把握、被災履歴がある鉄道路線への現地調査等を行った。さらに廃止が危惧されている路線沿線へのアンケート調査を実施でき、鉄道路線を取り巻く環境や意識等についての把握に努めることができた。 以上より、(2)おおむね順調に進展している、と考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
被災して橋梁流出などの重大な被害を受けた場合には、事業継続においては地域がその鉄道を必要とすることを明示しなくてはならない。事業継続の視点からは、事前にそのような計画を立案し、平時より実行していることがポイントであると考えられる。 今後の研究方針としては、インフラの現状等や災害ハザードを把握するための現地調査を継続して行うとともに、地域鉄道路線の事業継続計画に対する具体的な知見(潜在的リスク、構造物の脆弱性、輸送実績、観光への貢献度、継続か廃止かの意思決定分岐点)を求める評価モデルの構築を進める。あわせて昨年度実施したアンケート調査の集計・分析を進める。具体的には、仮に被災した場合の復旧費用の負担に関する設問も設けたことから、これを軸にクロス集計等を行う。 以上を通じて、本研究の目標である「被災した後に状況に応じて、どうしたらよいか意思決定する」から「被災の程度に応じた復旧・復興のシナリオがあらかじめ用意されており、被災時にはこれを修正しながら対応を進めることができる」状態を実現すること、すなわち地域鉄道路線の事業継続(あるいは早期の代替措置)につなげることを目指す。
|
Causes of Carryover |
本年度は、現地調査のための旅費、アンケート調査に関わる費用、データ整理等の人件費を執行した。残高が生じたが、執行率としては9割以上であり、調査研究も順調であることから、問題はないと考えている。 繰り越し分については、現地調査等の旅費の一部として活用する予定である。
|