2022 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation Methodology for Sustainable Tourism Based on Life Cycle Assessment
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22K12626
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
柴原 尚希 中部大学, 工学部, 准教授 (80509191)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 持続可能な観光 / 日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D) / 観光地域づくり法人(DMO) / STARs / ニューツーリズム / ライフサイクルアセスメント(LCA) |
Outline of Annual Research Achievements |
持続可能な開発目標(SDGs)や日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)では、ツーリズムの評価において、CO2排出総量の定量化だけでない、広い意味での持続性評価やマネジメントが求められている。 本研究課題では、観光のライフサイクルアセスメント(LCA)の方法論に関する理論の体系化とデータ整備を進め、観光の持続可能性の分析ツールへと発展させることで、意思決定や持続性の評価・マネジメントに活用可能な分析手法として構築することを目指している。 2022(令和4)年度は、観光地域づくり法人(DMO)を対象に、持続可能な観光(Sustainable Tourism)に関する取り組みの現状を、JSTS-Dの基準に基づき評価した。具体的には、地域性や特徴を考慮し、山梨県北杜市、石川県金沢市、沖縄県島尻郡座間味村、北海道小樽市に所在する4つのDMOについて、「A.持続可能なマネジメント(16項目)」「B.社会経済のサステナビリティ(8項目)」「C.文化的サステナビリティ(8項目)」「D.環境のサステナビリティ(15項目)」の観点から評価した。その際、サステナブルツーリズムに関する現状把握を支援するアプリケーションであるSTARsを活用し、5段階評価した結果を集計している。 その結果、各DMOの重点分野は様々であるが、「A.持続可能なマネジメント」が他分野より高評価となった。一方、「D.環境のサステナビリティ」について、気候変動や温室効果ガスに関する情報公開が少なく、基準を満たしていると判断するのは困難であった。これは、環境負荷の定量化や開示に苦慮しているとも解釈でき、環境負荷の定量化や情報開示に関する手法や手引きの必要性が示唆されることから、LCAのノウハウが貢献できる可能性があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022(令和4)年度の研究実施計画では、従来のLCA研究で観光を評価する際の課題に対応するために、各学会・展示会での情報収集、各地域や観光地に対する詳細なヒアリング・訪問調査を重ねて、評価体系の再構築を検討することを予定していた。 各学会では、環境負荷の定量化手法に関する最新の動向を知ることができ、観光や交通に関する発表が少ないことから、本科研費により方法論を確立する必要性を再確認できた。各展示会では、旅行会社等によるカーボンニュートラル実現に向けた取り組みや、その定量化のためのソフト・ツールに関する情報を知ることができた。 各地域・観光地については、まずは公開情報をもとに、日本版持続可能な観光ガイドラインの基準を活用することで、持続可能な観光に関する取り組みの現状について評価を試みることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023(令和5)年度も引き続き、各種学会・展示会での情報収集、各地域や観光地に関する調査を継続する。特に、2022(令和4)年度に実施した、DMOを対象とするJSTS-Dの基準に基づく評価について、評価対象のサンプル数を増やすとともに、自治体や宿泊事業者にも対象を広げる。また、この評価は、自己点検ツールを活用して実施しているため、外部評価に活用するための課題についても明らかにする。そのために、テキストマイニング手法を用いた場合や評価者が異なる場合に、評価結果にどのような違いが生じるかを検証する。さらに、DMOや事業者へのヒアリングを実施し、自己評価と外部評価との乖離項目とその要因を調査する。
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Causes of Carryover |
物品費として、解析用パーソナルコンピュータとLCAソフトウェアを計上していたが、別予算で調達できたため不要となった。一方、評価対象のサンプル数を増やすため、専門知識を有する人物に解析作業を依頼することにした。次年度使用額は、そのための謝金に充当する予定である。
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